イスラエルの攻撃でガザのジャーナリスト6人死亡 真実伝え続けた記者標的
エルサレム(CNN) イスラエル軍が10日深夜、パレスチナ自治区ガザ地区北部のガザ市を攻撃し、現地のシファ病院によると中東の衛星放送局アルジャジーラの4人を含むジャーナリスト6人が死亡した。
イスラエル軍は、アルジャジーラのアナス・シャリフ記者がイスラム組織ハマスの幹部だったという主張に基づき、同記者を狙って殺害した。アルジャジーラによると、ガザにいた同局の著名ジャーナリスト、モハメド・クレイケ氏もこの攻撃で殺害された。
アルジャジーラは今回の攻撃について、「ガザ占領を前に沈黙させようと必死になって、ガザで最も勇敢なジャーナリストの一人だったアナス・シャリフ記者の殺害を命じた」とする声明を発表した。
シャリフ記者は死亡する数分前、「この狂気が終わらなければ、ガザは廃虚と化し、人々は沈黙させられ、その顔はかき消される。そしてあなたは、自分があえて止めようとしなかったジェノサイド(集団殺害)の沈黙の証人として歴史に記憶される」とSNSに書き込んでいた。
病院長によると、シャリフ記者はほかの数人のジャーナリストと一緒にシファ病院前のテントにいたところを殺害された。この攻撃では少なくとも7人が死亡したという。

ジャーナリスト用のテントの外に立つアルジャジーラのアナス・シャリフ記者とモハメド・クレイケ記者。撮影された日付は不明/From anasjamal44/Instagram
イスラエル軍はシャリフ記者について、ハマス幹部としてイスラエルの民間人やイスラエル軍に対するロケット弾攻撃に関与したと主張。シャリフ記者とハマスの関係についてはガザ地区で見つかった多数の文書などで裏付けられていたと発表した。
この主張に対してシャリフ記者は生前、「私は政治的にどこにも属さない一ジャーナリストだ。唯一の使命は現場からありのままの真実を、偏らずに伝えることのみ」とSNSに投稿。「死の飢餓がガザを襲う今、真実を語ることは、占領者の目から見れば脅威になっている」と伝えていた。
米民間団体のジャーナリスト保護委員会(CPJ)は7月、シャリフ記者がイスラエル軍の標的にされたことを暗殺の前兆と受け止め、同記者の身の安全に重大な懸念が生じたと指摘していた。CPJによると、ガザで今回の戦闘が始まってからの約2年間で、イスラエル軍の攻撃によって死亡したジャーナリストは186人に上る。
国連はイスラエルが主張するシャリフ記者とハマスの関係について「事実無根」と断定。表現の自由に関する国連特別報告者のアイリーン・カーン氏は2週間前、「ガザ北部で生き残った最後のアルジャジーラ記者、アナス・シャリフ氏に対するイスラエル軍の度重なる脅迫と非難に対し、深い憂慮を覚える」と述べていた。
シャリフ記者は既婚者で2人の子どもがいた。同僚は、自分が死亡した場合に備えてシャリフ記者が用意していた最後のメッセージを公開した。
「あなた方に訴える。鎖によって沈黙させられることも、国境によって妨げられることもなく、この地と人々の解放に向けた架け橋となってほしい。尊厳と自由の太陽が、占領された我々の故国を照らすまで」