自動運転タクシーの夜間騒音に苦情噴出、妨害活動の住民も AIと人間は共存できるか
カリフォルニア州サンタモニカ(CNN) 時刻はもうすぐ午前0時。マスクにオーバーオール姿の若い男性が物陰から姿を現した。武器は一巻きの粘着テープ。目当ての自動運転タクシーに近寄ると、テープをはがして車のセンサーに貼り付ける。
「ウェイモが夜間に鳴らすピーピー音を止めたいだけ」と男性は言う。「ものすごい近所迷惑なんだ」
この男性のグループは、自動運転車を次々に止める「スタッカー」を自称。ほぼ毎晩、マスクで防犯カメラから顔を隠して任務にあたり、自動運転タクシーの前に立って進路をふさぐ。動けなくなったタクシーは裏通りに連なって、充電駐車場に入れない。サンタモニカ市内2カ所の充電用駐車場は、自動運転タクシーを運行するウェイモが今年1月に開設した。しかし住民には事前に周知していなかったらしい。「ウェイモをうまくスタックさせるにはどうすればいいか、ただ実験しているだけ」とスタッカーの1人はささやいた。
米グーグルの親会社アルファベットが展開するウェイモは、ロサンゼルス郡で約300台の自動運転タクシーを走らせている。利用者には人気だが、一部の住民は、車のクラクションやライトの点滅、バック時の警告音、さらには人間が車を充電したり掃除機をかけたりする作業音で一晩中眠れないと訴える。
「いきなり駐車場の営業が始まって、みんなが眠れなくなった」と話すのは「スタッカー・ワン」を名乗る男性。「ピー、ピー、ピーが一晩中続く」という別の男性は、サンタモニカの自宅を離れている時でさえ、頭の中であのバック音が聞こえるようになったと訴えた。

サンタモニカの駐車場で充電するウェイモの車両/Eric Thayer/Getty Images
ウェイモはスタッカー・ワンに対して接近禁止命令を出させようとしているが、今のところは認められず、スタッカー活動は続いている。
苦情を受けてウェイモは、タクシーの清掃用に音が静かな掃除機を調達し、裏通りを走行する際の速度制限を設け、苦情の多い駐車場の深夜の利用を制限するなどの対策を講じたと説明した。さらに、騒音を抑えるために竹も植えたとしている。
「それでも対策は不十分」と住民のナンシー・テイラーさんは言う。ウェイモの夜間の騒音は、まるでラスベガスの光のショーのようだと訴え、「昨夜はもっとひどかった」と話す。睡眠時には騒音をかき消すホワイトノイズマシンを使用して、遮光カーテンも導入した。
自動運転車とAIに対する法規制の課題
サンタモニカの住民とウェイモの争いは、運転手がいない車のように革新的な新サービスについて、誰がどう規制するかという問題を浮き彫りにした。