「日の光も見えなかった」、移民家族らが語る収容生活 米国境
(CNN) 米税関・国境警備局(CBP)の収容施設で、幼い子どもらを連れた移民の家族が長期にわたり、刑務所のような環境で拘束されている実態が、連邦裁判所への新たな申し立てで明らかになった。
17日に移民支援団体がCBPに対し、子どもたちを長期間、劣悪な環境下で拘束する措置をやめ、正確な情報を公開するよう求める申立書を提出した。
米国に流入する不法移民は今年に入って激減した。その一方で、移民の家族が収容を目的につくられていない施設で長期間拘束され、特に子どもへの影響を懸念する弁護士らが声を上げている。
メキシコ国境から不法入国する子どもを米政府が拘束した場合の処遇については、1997年の「フローレス合意」により、拘束を不必要に長引かせることなく親族らに引き渡すことや、適切な環境で収容することが定められている。これは、家族に連れられて越境した子どもたちにも適用される。
だが申立書は、CBPが合意に違反し、2~3時間ほどの留置を目的とする施設に長期間収容するなど、処遇を劣悪化させていると主張。子どもは特に、CBPの拘束下で起きるような混乱や残虐行為のトラウマ(心的外傷)を受けやすいと指摘した。
父親から引き離された幼い女児と母親が、カリフォルニア州の国境施設に42日間拘束された例もある。家族の供述書によると、この間に父親が面会を許されたのは2回だけだった。
女児は父親と離れてから様子が変わった。以前はよく話し、「ママ」「パパ」「はい」など5~6個の単語を使えていたが、今は全く話さなくなった。窓のないひとつの部屋に、女性と子ども23人が拘束されていたという。
供述書には「前後に一歩動くことさえできないほど詰め込まれていた」「42日間ずっとその場所にいた。日の光も見えなかった。外に出たのは、シャワーのある別の場所へ移動する時だけだった」と書かれている。
CNNはCBPにコメントを求めたが、回答は得られていない。
弁護士らによれば、メキシコ国境の越境者は急減したが、今年2月にCBPが72時間以上拘束した子どもは301人に上り、その大半は拘束期間が7日間を超えた。
CBPの報告に基づく申立書のデータによると、4月には213人が72時間以上、幼児を含む14人が20日間以上拘束された。
拘束された家族らに話を聞いた子どもの権利擁護団体「チルドレンズ・ライツ」のリーシャ・ウェルチ氏は、「越境する子どもの数は過去数十年で最も少ないのに、政府に拘束された子どもたちはかつてないほど残酷な扱いを受けている」と訴えた。
ウェルチ氏はさらに「私たちは保護を求めてやって来た無力な子どもたちに、トラウマを浴びせかけている。この申し立てにより、子どもを人道的に扱うよう政府の説明責任を改めて求める」と述べた。
バイデン前政権を含む米歴代政権は、急増する越境者への対応に悩まされてきた。連邦政府機関が圧迫された結果、やむなく家族や子どもを国境の施設に数日間留め置くこともあった。
CBPは拘束者を72時間以内に釈放するか、移民・関税執行局(ICE)など別の機関に引き渡すのが通例となっているが、引き渡し先の定員などの制約により、拘束期間が延びることも多い。これまでにCBPが各個人、家族の状況に応じ、臨時の入国許可を出すこともあった。
一方トランプ政権は、フローレス合意によって米政府の政策決定や、近年の越境者急増といった変化への対応が制限されるとして、合意の破棄を示唆している。
これに対して弁護士らは、CBPがフローレス合意や従来の方針に反して拘束を長期化させているうえ、国内の移民取り締まりでさらに問題のある施設を使うケースも増えていると指摘する。
裁判所に提出された供述書によると、オハイオ州では5歳の男児と両親が交通違反の取り締まりで連行され、州内にあるオフィスビルの一室に5日間拘束された。部屋には外が見える窓がなく、昼か夜かも分からなかった。オフィスに面した大きな窓からは、職員らがパソコンに向かう姿が見えた。職員は全員、男性だった。
部屋のトイレは通りかかる人から丸見えだった。照明は夜も点灯したままだったという。
またイリノイ州シカゴのオヘア空港では、国外から到着した11歳の子どもと母親が5日間拘束された。
国境の施設で、1歳児と生後2~3カ月の乳児を連れた家族が1カ月間、厳しい寒さの中で拘束された例もある。この家族は「寒さのあまり、息子たちは2人とも具合が悪くなった。子どもたちにもっと服を着せることも認められず、与えられたのはアルミブランケットだけ。電気はひと晩中ついていて、消えることがなかった。ずっと屋内で、太陽を見ることもなく過ごした」と供述している。