ベネズエラ、2歳女児の「拉致」で米国を非難 強制送還した両親から引き離しと主張
(CNN) 南米ベネズエラが、2歳女児を家族のもとに返すよう米国に要求している。米国は女児の両親を強制送還する一方、女児本人を政府の保護下に置いているという。
ベネズエラ外務省は28日、この事案について米国が女児を「拉致した」と非難した。また女児の父親はエルサルバドルにある悪名高い刑務所に送られたことを明らかにした。
ベネズエラ政府は声明で「(米国は)またしても極めて深刻な違反を犯して家族を引き離し、未成年者の情緒的な環境を奪った。とりわけ女児を生物学的な母親から引き離した」と述べた。
米国土安全保障省は女児の拉致を否定。両親から女児を保護しようとしていると主張する。同省は両親をベネズエラの凶悪なギャング組織「トレン・デ・アラグア(TDA)」の構成員だとみているが、その証拠は示していない。米国はTDAをテロ組織に認定している。
父親は自分がギャングの構成員とみられている理由について、体に彫られた複数のタトゥーのせいだと考えているが、3月初めに裁判所に提出された宣誓供述書によれば、それらはいずれもギャングとは無関係のものだと主張している。CNNはこうした疑惑について、女児の母親に質問している。
先月26日の声明の中で国土安全保障省は、強制送還者のリストから女児を除外したのは「本人の安全と福祉のため」と説明。女児は現在も米保健福祉省の難民定住課(ORR)の保護下にあり、里親家族と一緒に過ごしていると言い添えた。
CNNはORRにも連絡を取り、今回の女児の事案について詳細な説明を求めている。
法律擁護団体が裁判所に提出した文書によれば女児と両親は亡命のため2024年5月に米国入りした。父親はバイデン前政権下の7月、国外退去命令を受けた。宣誓供述書の中でこの父親は、自身とパートナーが移民の勾留施設に入れられ、女児はORRの保護下に入ったと説明。同年10月から今年の3月にかけて、週ごとに女児に面会していたと述べた。CNNは父親の弁護士に連絡を取り、本人の勾留と国外退去命令の詳細な説明を求めている。
弁護士が提出した裁判文書によると、父親は3月29日にキューバのグアンタナモ湾の移民収容施設に入れられ、翌日にはエルサルバドルの悪名高い巨大刑務所「CECOT」に送られた。米国は同刑務所を使ってベネズエラ人の移民数百人を拘束している。彼らは凶悪なギャングの構成員とされているが、米国側はそれを裏付ける有力な証拠を提示していない。
父親がエルサルバドルに送られて間もなく、母親はベネズエラに強制送還された。ベネズエラ側が明らかにした。
国土安全保障省は、ORRが女児を保護し続ける理由として、虐待や犯罪行為に直面する事態から守るためと説明している。
ベネズエラは米国が国際法に違反していると非難。女児の「即時解放」を要求すると共に、あらゆる法的、外交的措置を講じて女児を確実に帰国させる意向を示した。