ANALYSIS

【分析】トランプ米大統領と交わした激論、マスク氏が圧勝? SNSの威力見せつけ

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大統領執務室で握手を交わすイーロン・マスク氏とトランプ大統領=5月30日/Kevin Dietsch/Getty Images

大統領執務室で握手を交わすイーロン・マスク氏とトランプ大統領=5月30日/Kevin Dietsch/Getty Images

(CNN) 最高SNS司令官のドナルド・トランプ米大統領は、かつて大好きだったSNSプラットフォームのX(旧ツイッター)を握るイーロン・マスク氏相手に、ついに敗北を喫したのかもしれない。

マスク氏は5日、自身のXアカウントを政治的武器のように利用して、矢継ぎ早にトランプ大統領を攻撃した。過去にバイデン前大統領など民主党陣営を激しく非難したのと同じやり方だった。

トランプ氏も、はるかに規模が小さい自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で反撃を試みたものの、真夜中を含めて1日の投稿が100回を超すこともあるSNS中毒の大物には太刀打ちできなかった。

トランプ氏は世界中のメディアを常時利用できるなど米大統領としての全権を握っている。だが今回の口論はマスク氏の方が有利だった。マスク氏はSNSでトランプ氏よりもはるかに大きな地盤を持ち、最近では汚い手も積極的に使う。

トランプ氏が「イーロンは『すり減っていた』のでやめさせた」と一般論でマスク氏をやゆしたのに対し、マスク氏は悪意をむき出しにしながら圧倒的な量で応戦。性的人身売買の罪で有罪になった故ジェフリー・エプスタイン元被告まで引き合いに出した。

SNSの一般ユーザーはあぜんとしながら画面をスクロールし続け、この言い争いを見守った。この日のXはここ数年で一番面白かったと冗談を交わすインフルエンサーもいた。

「正直言ってめちゃくちゃ面白い。これが国家運営だってことを一瞬でも忘れられれば」とポッドキャスト司会者のジェイミー・ワインスタイン氏はコメントしている。

SNSが登場するずっと以前、まだ新聞社が大きな影響力を持っていた当時、「インクをバレル単位で買う男とは争うな」ということわざがあった。

この言葉は今、SNSに当てはまる。そしてマスク氏のような億万長者のSNSオーナーは、圧倒的なパワーを誇る。

マスク氏はそれをむき出しにして、真偽も稚拙さも気にしないまま、次々に投稿を繰り出し、注目と「いいね」と共有で点数を稼ぎ続けた。

マスク氏の投稿は瞬時に拡散する。トランプ氏のトゥルース・ソーシャルの実質ユーザーが630万とされるのに対し、マスク氏のXは推定6億に上る。

5日のけんかは別々のSNSを使ってトランプ氏とマスク氏が互いに罵声を浴びせ合った。まるで隣同士が垣根越しに怒鳴り合うように。

トランプ氏がトゥルース・ソーシャルに書き込んだ投稿のスクリーンショットをマスク氏が掲載して間接的に大統領に反論する場面もあった。

確執は数日前から始まっていた。マスク氏(2月の時点で「ストレート男性が別の男性を愛せる限界まで私は@realDonaldTrumpを愛している」と書き込んでいた)はトランプ氏肝いりの法案を快く思ってはいなかったものの、それを口に出すことはためらっていた。

しかし3日になってそれが一変。マスク氏はXへの歯に衣着せぬ投稿で同法案を「胸くそ悪い醜態」とこきおろし、ネット上での圧倒的強さを見せつけた。4日にはこれに賛同したファンへの返信で、映画「キル・ビル」のユマ・サーマンの画像など法案反対の風刺画像を共有した。

ワシントン・ポスト紙が数日前に報じた通り、トランプ氏はトゥルース・ソーシャルへの投稿頻度が増えていたにもかかわらず、低調が続いていた。

同紙によれば、トランプ氏が今年1月に大統領に返り咲いてから132日の間にトゥルース・ソーシャルに投稿した回数は2262回。これは1期目の同じ期間にツイッター(現在のX)に投稿した回数の3倍以上に相当する。

しかしトゥルース・ソーシャルの規模ははるかに小さく、トランプ氏の発言は、風刺画像を多用するマスク氏の挑発的な発言ほどは注目されなかった。

5日にトランプ氏がホワイトハウスの大統領執務室でマスク氏に言及してマスク氏に反撃を浴びせられる前に、マスク氏はトランプ氏の過去のツイートを掘り起こし、例えば債務上限を引き上げる共和党の計画に反対したトランプ氏の投稿などを紹介。「賢明な言葉だ」とコメントしてトランプ氏の矛盾を突いた。

対立が深まるにつれ、5日午後の取引でマスク氏のテスラ株は下落した。しかし下落はトゥルース・ソーシャルを運営するトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ株も同じだった。

「イーロンが自分に歯向かうのは構わない。だが何カ月も前にそうすべきだった」。トランプ氏は自身のサイトにそう書き込み、自らが「大きな美しい法案」と呼ぶ法案への注目を取り戻そうとした。

法案の論点について幾つか投稿したトランプ氏は続いて、観客に再び振り向いてもらおうとする歌手のように、あのヒット曲を繰り出した。「米国を再び偉大に!」

本稿はCNNのブライアン・ステルター記者とアンドリュー・キレル記者による分析記事です。

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