誤ってエルサルバドル送還、アブレゴガルシア氏が米国に帰国　刑事訴追に直面

（ＣＮＮ） ボンディ米司法長官は６日、３月中旬に誤ってエルサルバドルへ強制送還された米メリーランド州在住のキルマー・アブレゴガルシア氏が、連邦刑事訴追を受けるため米国に戻されたと明らかにした。

トランプ政権はアブレゴガルシア氏の帰国を「促進」させるよう求める裁判所命令をめぐり、数カ月にわたって連邦司法当局と激しく対立してきた。連邦判事の一人はこの状況について、行政府と司法府の間の「危機の発端」になりかねないと警告していた。

アブレゴガルシア氏はテネシー州中部地区で、利益目的で不法移民の違法移送を共謀した罪、および利益目的で不法移民を違法移送した罪の２件で起訴されている。

６日午後に公開された起訴状では、アブレゴガルシア氏らが近年、「米国内に滞在する許可を持たない不法移民数千人を故意かつ違法に移送する」ことを共謀していたと非難。「その多くはＭＳ１３ギャングの構成員や関係者だった」と指摘している。

一方、アブレゴガルシア氏と家族は、エルサルバドルではギャングの暴力から逃れていたと主張。自身がＭＳ１３の構成員だとの疑惑を否定している。

トランプ政権の当局者は、一連の罪状がアブレゴガルシア氏の国外退去を正当化する理由になると指摘するが、事情に詳しい関係者によると、訴追の決定はナッシュビルの司法省刑事部門トップの辞任を招いたという。

アブレゴガルシア氏の弁護士は、トランプ政権が法制度を「もてあそんでいる」と非難し、同氏は刑事裁判所ではなく移民裁判所に出廷すべきだと訴えた。

弁護士はＣＮＮに寄せた声明で、「政権は裁判所命令に反してキルマーを国外の刑務所へ移送した。数カ月の遅延と隠ぺいを経たいま、彼らは誤りを是正するためではなく、訴追するために彼を帰国させた。これは政権が当初から裁判所をもてあそんでいたことを示す」と指摘。「適正手続きとは、処罰される前に自己弁護する機会を与えられることであって、処罰の後ではない。これは権力の乱用だ。正義ではない」と述べた。