ANALYSIS

「トランピズム」がなくならない、これだけの証拠

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トランプ大統領の型破りな政治哲学は、今後も共和党内に影響を及ぼし続けるという/Al Drago/Getty Images

トランプ大統領の型破りな政治哲学は、今後も共和党内に影響を及ぼし続けるという/Al Drago/Getty Images

(CNN) 米国のドナルド・トランプ大統領は、あと34日たてば大統領ではなくなる。しかし大量かつ増える一方の証拠が示すように、同氏の過激な政治哲学はさながら触手のように共和党の中心部分まで深く潜り込んでいる。間違いなく言えるのは、この大富豪のビジネスマンが職を退いた後も、本人の影響力は依然として共和党内に残るだろうということだ。

その直近の事例が15日、バージニア州からもたらされた。来年の同州知事選に立候補しているアマンダ・チェース上院議員が、トランプ大統領は戒厳令を発動するべきだと宣言したのだ。ホワイトハウスにとどまるためにはそうしなくてはならないと。

チェース氏はフェイスブックに以下のように記した。

「米国民はばかではない。我々は不正が行われたことを知っており、絶対に今回の結果を受け入れない。公正な選挙なら受け入れもするが、不正によって勝利するなど言語道断だ。勝負はまだ終わっていない。大変ありがたいことにトランプ大統領には気骨があり、敗北を認めるのを拒んでいる。トランプ大統領は戒厳令を布告するべきである。フリン将軍もそう提言している」

マイケル・フリン氏は国家安全保障担当の大統領補佐官を短期間務めた人物で、最近大統領から恩赦を与えられた。2016年の米大統領選におけるロシアの介入の疑惑をめぐる捜査で、連邦捜査局(FBI)に虚偽の供述をした罪を認めていた。最も目を引く提唱者として同氏の掲げる計画は、トランプ大統領が戒厳令を布告し、選挙のやり直しを求めるというものだ。

これは明らかに異様な動きである。反民主党の姿勢でもある。そしてチェース氏は完全にその気だ。こういったやり方により、来年の州知事選に向けた共和党からの指名を勝ち取れると信じているようだ。

それは同氏のここまでの選挙に対する戦略とも一致する。同氏と予備選挙を争う州下院議員のカーク・コックス氏は、戒厳令の提案を「ばかげており危険」だとしている。

チェース氏は自らを「ハイヒールを履いたトランプ」と評しており、地元紙との最近のインタビューでは自身とトランプ大統領との共通点をさらに詳しく語った。

「私はトランプ大統領を支持している。彼の政策を支持しているし、大統領同様、私も後には引かない。前へ向かって突き進む。正しいことを行い、人々に最良の結果をもたらす。屈服はしない。多くの弱腰の共和党議員とは違う。私には気骨がある。リッチモンドにいる既得権益層のエリートと献金システムに立ち向かう。トランプ氏もまさにそうだ。メディアや献金システムに取り入ったりなどせず、国民にとって正しいと思うことだけをした。その点で、私たちは互いにとても似通っている」(チェース氏)

チェース氏は声も大きい。とりわけバージニア州においてはそうで、2020年の大統領選は何らかの方法で操作されていたとの虚偽の主張を展開している。政治にまつわる言説の信憑(しんぴょう)性をチェックするサイト、ポリティファクトは先ごろ、同氏の不正選挙に関する主張に対し、真実から最もかけ離れているとする評価を下した。

チェース氏が共和党の指名を勝ち取る公算は小さいとみられている。州共和党は最近、予備選挙ではなく党大会で州知事候補者を選出する意向を表明しており、これが同氏の道のりを険しくしている。とはいえ、同氏の掲げる一段と極端な「トランピズム(トランプ主義)」を支持する層が存在することに疑問の余地はない(チェース氏は銃の権利に関する問題では自分の方がトランプ氏よりさらに保守的だと発言している)。

たとえチェース氏が党大会で勝利を収められなくても、共和党を更なる崩壊へと引きずり込む可能性は大いにある。同氏は無所属で本選に立候補する考えを示している。もしそうなれば、チェース氏は丸1年にわたって自身のトランプ的見解を全国民に向かって表明し続けるだけでなく、共和党が州知事の座を奪い返すチャンスさえも台無しにしてしまいかねない。

チェース氏は、トランプ氏の哲学(というほどのものでもないが)のあらゆる面を完全に受け入れ、選挙での成功に希望を託すという、候補者間に流れる大きな動きの一部だ。次期下院議員のマージョリー・テイラー・グリーン氏(ジョージア州)とローレン・ボーベルト氏(コロラド州)は今年、トランプ氏の純粋な追随者として立候補し、当選した。彼女らはアラバマ州のモー・ブルックス下院議員やアリゾナ州のポール・ゴサール下院議員、オハイオ州のジム・ジョーダン下院議員といった面々に加わることになる。彼らは可能な限りトランプ氏に近い立場をとる。ブルックス氏とゴサール氏に至っては来年1月、選挙人による大統領選の投票結果の拒否を計画しているほどだ。

トランプ氏が2024年に立候補しようとしまいと(同氏の陣営は15日夜、その可能性に言及した資金集めのメールを支持者に送っている)、同氏の爪痕(あと)は共和党内の至る所に残るだろう。チェース氏のような人物と、彼女の描く青写真に従う人々を通じ、その影響力は今後数カ月、数年にわたって持続することになる。

ユタ州選出の共和党のミット・ロムニー上院議員は15日午前、CNNの番組で次のように語った。

「トランプ大統領は今後も共和党に実質的な影響を及ぼし続けると思う。(中略)トランピズムが消えてなくなるとは思えない」

本稿はCNNのクリス・シリザ編集主幹による分析記事です。

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