米国の子どもの死亡率、他国比で突出 銃の犠牲は15倍、慢性疾患や精神疾患も急増
(CNN) 米国の子どもの健康状態が過去数十年で著しく悪化している。子どもの死亡率は同程度の所得の他国に比べて米国の方がはるかに高いことが、最新の研究で明らかになった。
この研究は7日の医学誌JAMAに発表された。論文共著者でフィラデルフィア小児病院教授のクリス・フォレスト氏は、「この国の子どもたちは苦しんでいる」と指摘する。
研究チームは全米規模の数億件の健康記録や電子カルテなどを分析した。その結果、2007~22年にかけ、米国の1~19歳の死亡率は他の高所得国に比べて1.8倍高いことが分かった。最も差が大きかったのは暴力と交通事故による死亡率で、銃によって死亡する確率は他国の15倍、自動車事故による死亡率は2倍を超えていた。
子どもの慢性疾患も増えている。フォレスト氏が子どもの診療を始めた1990年代当時は、慢性疾患の子どもはほとんどいなかったという。しかし今ではほぼ半数の子どもが慢性疾患のために治療を受けていることが、今回の調査で判明。2023年の子どもが慢性疾患を患う確率は、11年に比べて15~20%高かった。
この期間の間に改善がみられた慢性疾患は喘息(ぜんそく)のみ。うつ、不安、孤独感といった心の健康問題は増加し、自閉症、行動問題、発達の遅れ、言語障害、注意欠陥多動性障害も増えていた。
肥満、動きにくさ、睡眠障害、早発月経などの身体的問題も大幅に増えている。
慢性疾患については米政府の「アメリカを再び健康にする委員会」がこのほど発表した報告書でも焦点が当てられ、子どもたちは慢性疾患のために「米国史上最も不健康な世代」になったと指摘していた。原因については超加工食品や環境の中の化学物質、スマートフォンなどの慢性的な使用、医薬品の過剰処方を挙げた。
フォレスター氏は言う。「私たちの子どもたちは非常に有害な環境で育っている。化学物質だけでなく、食べ物やiPhoneだけのせいでもない。もっと幅広く、もっと根深い。いわゆる発達エコシステムがそれだ。これを変えることは非常に難しい」
1960年代の米国の子どもの死亡率は、同程度の所得の他国とほとんど変わらなかった。しかし70年代から状況が変わり始め、現在、米国の子どもの1日あたりの死亡数は、デンマークやドイツなど他の富裕18カ国を約54人上回る。
2007~22年にかけての米国の乳児の死亡率は、他の18カ国に比べて1.78倍だった。大きな差が出た原因は、早産や、ベッドで窒息したり首が絞まったりしたことによる突然死の多さだった。
危険にさらされているのは子どもだけではないとフォスター氏は話す。「この国では女性も苦しんでいることから、子どもたちは人生の良いスタートが切れない」
妊婦が医師の診察を受けにくい「マタニティー砂漠」の問題は深刻化している。非営利団体マーチ・オブ・ダイムズの調査によると、米国の郡の約35%がマタニティー砂漠と化しているという。妊娠中絶規制を厳格化する州が増え、診療がしやすい州へと医師が移る中で、この割合はさらに増える見通しだ。2020~22年にかけ、マタニティー砂漠地帯の妊婦の早産は1万件を超えた。