「あと数時間で大勢が死ぬ」　保育器１台に複数の乳児、ガザの燃料不足が危機的状況に

（ＣＮＮ） パレスチナ自治区ガザ各地の病院で燃料が底を突きかけ、１台の保育器に複数の乳児を詰め込まなければならない状況に追い込まれている。救命に欠かせない処置の停止を強いられる病院も相次ぎ、患者の命が危険にさらされているとして、医師が危機感を募らせている。

国連人道問題調整事務所（ＯＣＨＡ）によると、病院の燃料不足は危機的な状況に陥り、救急車も使えなくなって、水道は停止寸前の状態にある。「こうした状況の中、イスラエルが新たな燃料の搬入を認めない限り、間もなく死者が急増する恐れがある」とＯＣＨＡは述べ、十分な量の燃料を緊急かつ定期的に供給するよう求めた。

今年に入って１１週間に及んだイスラエルによるガザ封鎖で、２００万人あまりの住民は飢餓寸前に追い込まれ、人道危機が深まっている。５月には限定的な援助物資の供給が再開されたが、人道支援団体によれば必要とされる量には到底届かない状況にある。

ガザ市南部にあるアハリ病院のファデル・ナイム院長は９日、別の施設で複数の新生児が１台の保育器に入れられた写真をＸに投稿した。

「この悲劇的な過密状態は、単に医療機器が足りないだけの問題ではない。ガザに対する過酷な戦争と、医療態勢を麻痺（まひ）させた息の根を止める封鎖の直接的な結末だ」とナイム院長は書き込んでいる。

「この封鎖は、一般的な早産児の診療を生か死かの苦しみにしてしまった。子どもが生まれる世界は、爆弾や封鎖によって生死が決まる場所であってはならない」

ガザ北部にあるシファ病院のモハマド・アブ・サルミヤ院長によると、同病院では燃料不足によって集中治療と手術のみに専念する必要に迫られ、腎臓透析科は閉鎖せざるを得なくなった。

「数時間以内に燃料が調達できなければ、シファ病院はあと数時間で機能できなくなり、多数の死者が出る」。サルミヤ医師はＣＮＮにそう語り、保育器の乳児２２人を含めて数百人の患者が危険にさらされていると訴えた。

同病院で撮影された映像には、医師が懐中電灯を使って患者の手当てをする様子が映っている。

ガザ南部のナセル病院も、あと２４時間分の燃料しか残っていないといい、産科や集中治療などに集中していると語った。

未曽有の人道危機

燃料不足にとどまらず、発電機の交換用の部品も入手困難な状態にあり、ガザで閉鎖を強いられる病院はさらに増える恐れがある。

ガザ中部のアクサ病院は緊急声明を発表し、主発電機が交換用部品の不足のために故障して、予備用の小型発電機に頼らざるを得なくなったと説明。「燃料はあと数時間で底をつく。数百人の患者の命が病棟内で危険にさらされている」と訴えた。

病院以外でも、調理や海水の淡水化、排水処理、救助活動に使う車両も燃料を必要とする。

イスラエルは今回の戦争が始まって以来、ガザへの燃料の搬入を制限し続けており、イスラム組織ハマスがロケット弾の発射に利用するかもしれないと主張したこともある。

医療支援団体の国境なき医師団は８日の声明で、ガザ地区の状況を「未曽有の人道危機」と形容。停戦を呼びかけるとともに、人道支援物資の搬入を大幅に増やすよう訴えた。