(CNN) すり切れや引っかき傷、汚れのついた黒のレザー製バッグ「バーキン」が、手数料込み860万ユーロ(約14億7000万円)で落札され、ハンドバックとしてのオークション史上最高額を樹立した。落札価格は700万ユーロだった。
エルメスが初めて手掛けたバーキンは、英国人俳優で歌手のジェーン・バーキンのためにデザインされたもの。ジェーン・バーキンは、このバッグが究極のラグジュアリーの象徴となる前の1985年から1994年まで、ほぼ毎日このバッグを愛用していた。この希少なバッグは10日、競売会社サザビーズが開催した、アレキサンダー・マックイーンやクリスチャン・ディオールなど有名なラグジュアリーファッションのオンラインオークションで落札された。

今日の多くのバーキン愛好家はバッグを新品同様の状態に保っているが、ジェーン・バーキンのオリジナルのバッグは実用性を重視してデザインされており、本人はほぼ毎日愛用していた/Edward Berthelot/Getty Images; Gilles Leimdorfer/AFP/Getty Images
オークションに先立ち、サザビーズはCNNに対し、オリジナル・バーキンの推定価格の公表は控えるとしていたが、事前入札ではすでに100万ユーロを記録していた。オークションのライブストリーミングでは、入札額がつり上がっていく様子に驚きの声が上がっていた。サザビーズの記者発表によると、9人のコレクターによって繰り広げられた10分間の入札を勝ち抜いたのは日本の個人コレクターだった。
サザビーズのハンドバッグ・アクセサリー部門グローバル責任者、モルガヌ・ハリミ氏は、この歴史的なオークションをファッションとラグジュアリーの歴史における「重要な節目」と評した。同氏は記者発表で「伝説のアイテムが持つパワーと、独自の来歴を持つ特別なアイテムを求めるコレクターの情熱と欲望をかき立てる力を驚くべき形で証明した」と述べた。「オリジナル・バーキンのオークションは、究極的にはそのミューズであるジェーン・バーキンの不朽の精神と魅力をたたえるものでもある」
「オリジナル・バーキン」は、バーキン自身が94年にエイズ研究に役立てるために売却して以降、何度か個人の手に渡ってきた。このバッグが最後にオークションに出品されたのは25年前、サザビーズがキャサリン・B氏とだけ明かした売主によるものだった。
2023年に76歳で亡くなったバーキンは生前、CNNのクリスティアン・アマンプール記者に対し、自分は、収納力があって、誰もが欲しがり、今や最も有名で高価なアクセサリーの一つとなったこのスタイルを生み出したことで記憶されるだろうと予言した。
「私が死んだら、(人々は)このバッグのことしか話題にしないかもしれない」とバーキンは冗談めかして語っていた。
サザビーズによると、初代バーキンは、サイズ、金属製のリングや金具、ショルダーストラップなどいくつかの点で後継モデルとは異なっており、それらが再現されたことはない。フロントフラップにはジェーン・バーキンのイニシャル「J.B.」が刻まれ、ショルダーストラップからは小さなシルバーの爪切りがぶら下がっている(サザビーズによると、バーキンは爪をきちんと整えるのが好きで、すぐに使えるよう爪切りをいつも身近に置いていた)。さらにこの使い古されたバッグには、人道支援団体である「世界の医療団」と「国際児童基金(ユニセフ)」の2枚のステッカーを貼っていたことによる変色など、バーキンの日常生活の痕跡が残されている。

オークションに先立ちニューヨークで展示された「オリジナル・バーキン」/Brendan McDermid/Reuters
1984年、当時のエルメスのジャン・ルイ・デュマ最高経営責任者(CEO)は、パリ発ロンドン行きのフライトで偶然、バーキンの隣に座った。3人の子どもを持つバーキンは、自分のニーズに合った十分な大きさのハンドバッグが見つからず大きなバスケットを持ち歩いているとデュマ氏に話したという。
バーキンは2020年にアマンプール氏に対し、「スーツケースの半分くらいの大きさの」バッグが欲しかったと振り返った。
「彼から『なら描いてみて』と言われたので、飛行機のエチケット袋――おう吐袋――にデザインを描いた」とバーキンは語った。エルメスは1985年にバーキンにこのバッグを贈り、その後も四つ贈ったという。バーキンはエルメスから名前の使用料を受け取っていたが、毎年慈善団体に寄付していたと伝えられている。
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原文タイトル:Jane Birkin’s original Hermès bag sells for $10 million(抄訳)