緊急災害対応を阻んだ米政府の新規定、一刻を争う状況で長官の承認待ち テキサス州洪水で

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災害の責任の所在を問われ、反論するテキサス州知事

ワシントン(CNN) 米テキサス州中部を襲った大規模な洪水。連邦緊急事態管理庁(FEMA)は即座に捜索救助隊を派遣して救命のためのリソースを配備できる態勢を整えた。過去の災害で数えきれないほど繰り返してきた措置だった。

しかし同庁の職員4人がCNNに語ったところによると、今回、この対応が手続き上の壁に突き当たった。

国土安全保障省のクリスティ・ノーム長官(FEMAは同省の傘下にある)は最近、支出削減を目的として、10万ドル(約1500万円)を超す契約や助成金の支出については全て、事前に長官の承認を義務付けるという規定を制定していた。

FEMAの災害対応は現場のスタッフと契約して行っているため、数十億ドル規模に跳ね上がるのが常。当局者によると、10万ドルという上限額は実質的にごく少額にすぎず、比較的小さな支出にさえ承認が必要になったという。

今回のノーム長官の命令によって、まさにFEMAの自律的な対応が最も必要とされる時に、その対応がほぼ不可能になったと当局者は訴える。

「先手を打ち、態勢を整え、何が必要かを見越して、それを提供できる準備を整える。かつて我々は、その明確な基準のもとに活動していた」。FEMAのベテラン職員はそう指摘する。「今の我々にはその意思が明確ではなくなった」

例えば、水位が上昇してテキサス州中部の町で浸水被害が発生する中で、FEMA職員は、各地に拠点を置くネットワークから都市捜索救助隊を事前に配備できない状況に陥った。

複数の職員によると、かつてはFEMAが緊急出動要請を見越して、洪水などの壊滅的な状況に対応する訓練を受けた都市捜索救助隊を即座に災害現場近くに配備することができていた。

ところがテキサス州で一刻も早く人命救助が必要な状況の中でFEMAは、そうした人員を派遣する前にノーム長官の承認が必要な状況に突き当たった。ノーム長官がFEMAによる都市捜索救助隊の派遣を承認したのは、洪水の発生から72時間以上も経過した7日だった。

国土安全保障省は、テキサス州の洪水に対する連邦政府の対応や、FEMAを解体して災害対応の責任を州に負わせるドナルド・トランプ大統領の計画の正当性を強調している。

テキサス州の洪水では州や米沿岸警備隊、税関・国境警備局(CBP)なども協力して対応に当たった。

しかしFEMAに対して求められる煩雑な手続きが増えたため、一刻を争う状況で連邦政府のリソースを配備するための新たなハードルが加わった。

関係者によると、テキサス州は捜索救助活動を支援するため、FEMAに航空写真を要請した。ところがそのために必要な契約についてノーム長官の承認を待っていたことから対応に遅れが出た。

FEMA職員は災害コールセンターの電話対応にもあたっていたが、ある職員によると、電話をかけてきた相手はつながるまでに長時間待たされた。サポート要員を増やすための契約がノーム長官に承認されるのを待っていたためだった。

今回の混乱は、トランプ政権下のFEMAで対応能力や権限をめぐって不確実性が深まっている現実を露呈させた。山火事やハリケーンのシーズンはこれから本格化する。FEMAの内部関係者は、もし今回の災害が複数の州をまたいで拡大していれば、対応の遅れや混乱状態はさらに深刻化していた可能性があると警告した。

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