地球から最も遠い探査機「ボイジャー1号」、04年から未使用のスラスターが復活

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恒星間空間を移動するボイジャー探査機のうちの一つを描いたアーティストの想像図/JPL-Caltech/NASA

恒星間空間を移動するボイジャー探査機のうちの一つを描いたアーティストの想像図/JPL-Caltech/NASA

(CNN) 米航空宇宙局(NASA)のエンジニアはこのほど、地球から最も遠くに位置する宇宙探査機「ボイジャー1号」の姿勢制御スラスターを復活させることに成功したと明らかにした。以前から予定されていた通信途絶が間近に迫る中での対応だった。

通信途絶は、ボイジャー1号と姉妹機ボイジャー2号へコマンドを送信する地球上のアンテナの改修に伴う事象。通信途絶の発生とスラスターの不具合が重なれば、NASAはこの歴史的なミッションを救う手立てがなくなっていた可能性もあった。2004年から未使用だった当初のロールスラスターを修理したことで、来年再び地球と交信するまで老朽化したボイジャー1号の運用を継続する助けになりそうだ。

ボイジャー1号は1977年9月に打ち上げられた探査機で、正常に機能するためにスラスターのセットを複数使用している。主スラスターのセットはボイジャー1号のアンテナが地球を向いたままになるよう、探査機の方向を慎重に調整する役割を担う。これにより、ボイジャー1号は250億キロ彼方の恒星間空間から収集したデータを地球に送信したり、ボイジャーの担当チームから送られてきたコマンドを受信したりといった動作を確実に行うことができる。

主スラスターのセットの中にはボイジャー1号のロール(回転)を制御する追加スラスターが搭載されており、目安となる恒星の方を向いたまま、宇宙空間内で一定の方向を保つことが可能だ。

ボイジャー1号がロール運動を制御できないようだと、ミッションの行方が危うくなる可能性がある。

だが、スラスターの噴射に伴い、時間の経過とともに少量ながら推進剤の残留物が蓄積されてきた。これまではボイジャー1号の当初の姿勢制御スラスターと予備の姿勢制御スラスター、さらに1980年代の惑星フライバイ(接近通過)の際に軌道を変更する目的で使用されたスラスターのセットを交代で使うことで、詰まりを回避してきた。ただ、軌道制御スラスターはボイジャー1号の回転には寄与しない。

ボイジャー1号の当初のロールスラスターは20年あまり前、内部ヒーター2基の電力喪失後に稼働を停止した。以来、ボイジャー1号は予備のロールスラスターに頼って目安となる恒星の方向を向いていた。

NASAジェット推進研究所(JPL)でボイジャーのミッション責任者を務めるカリーム・バダルディン氏は 「当時、チームは主要なロールスラスターが機能しなくても構わないという考えだったと思う。完全に機能する予備のスラスターがあったからだ」「それに正直なところ、ボイジャー1号と2号がもう20年も持つとは考えていなかったのだろう」と語った。

ボイジャー1号のエンジニアの間では現在、残留物の詰まりにより、予備のスラスターが今秋にも機能を停止する可能性があるとの懸念が広がっている。このため創意工夫を凝らし、リスクを取ってでも、長年機能停止していた当初のロールスラスターを復活させる必要があった。

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