宇宙における金の起源、中性子星の衝突以外にも発見? 「マグネター」のフレアから生成か
(CNN) 天文学者は何十年にもわたり、金のように最も重い部類の元素の宇宙における起源を突き止めようと試みてきた。そして今、宇宙探査ミッションのアーカイブデータから見つかった信号に基づく新たな研究で、潜在的な手がかりが示された可能性がある。その手がかりとは「マグネター」、つまり非常に強力な磁場を持つ中性子星だ。
科学者の見方では、水素やヘリウムなどの比較的軽い元素に加え、少量のリチウムでさえ、138億年前のビッグバンによる宇宙誕生後の初期から存在していた可能性が高い。
その後、恒星の爆発によって鉄のような比較的重い元素が放出され、新たに誕生した恒星や惑星に組み込まれた。だが、鉄より重い金の宇宙全体における分布は、天文学者にとって謎のままだった。
「これは宇宙における複雑な物質の起源という観点から見て、根本的な問いだ」。そう指摘するのは、天文学誌アストロフィジカル・ジャーナル・レターズに先月29日掲載された論文の筆頭著者、アニルド・パテル氏だ。米コロンビア大学の博士課程に所属するパテル氏は声明で、「未解明の興味深いパズルといえる」とも述べた。
従来、宇宙における金の生成との関連が指摘されていたのは、中性子星の衝突だけだった。
天文学者は2017年、二つの中性子星の衝突を観測。この破壊的な衝突により「重力波」と呼ばれる時空のさざ波や、ガンマ線バーストによる光が放出された。「キロノバ」として知られるこの時の衝突は金やプラチナ、鉛のような重い元素も生み出し、キロノバは宇宙における金の「工場」になぞらえられている。
論文の共著者であるルイジアナ州立大学バトンルージュ校のエリック・バーンズ助教(天体物理学)によると、中性子星の合体の大半は、ここ数十億年の間に発生したと考えられている。
だが、これまで未解読だった米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)の望遠鏡による20年前のデータを見ると、そのはるか前、宇宙創生期に形成されたマグネターのフレアも別の形で金を生成していた可能性が示唆されているという。
恒星の地震
中性子星とは爆発した恒星の核の残骸を指す。その密度は非常に高く、中性子星の物質をティースプーン1杯分集めると、地球上では10億トンの重さになる。一方、マグネターは極めて明るいタイプの中性子星で、信じられないほど強力な磁場を持つ。
バーンズ氏によると、天文学者は依然としてマグネターの正確な形成過程の解明を試みている段階だが、最初のマグネターは宇宙の誕生から約2億年以内の時期に、最初期の恒星に続いて誕生した可能性が高い。これは今から136億年ほど前に当たる。
時折、マグネターは「星震」によって大量の放射線を放出することがある。
バーンズ氏はメールで「中性子星には地殻と超流動状態の核がある」と説明。「地表下の運動により表面に圧力が蓄積し、最終的に星震を引き起こすことがある。マグネターの場合、これらの星震が非常に短いX線バーストを発生させる。地球と同じように、恒星にも特に活発な時期があり、数週間で数百あるいは数千のフレアが発生する。同様に、ごくたまにではあるが、非常に強力な地震も発生する」と指摘した。
パテル氏によると、研究者らは巨大フレアの際にマグネターが物質を放出することを示唆する証拠を発見していたものの、こうした質量の放出を物理的に説明することはできていなかった。
パテル氏に助言するコロンビア大学のブライアン・メッツガー教授(物理学)を含む共著者数人の最近の研究によると、フレアが地殻の物質を加熱して、高速で放出している可能性が高いという。
「研究者らは、この爆発的な質量放出を生み出す物理的条件が、重い元素の生成に有望だったという仮説を立てた」(パテル氏)