金星着陸に失敗した旧ソ連時代の探査機、地球に落下の見通し

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NASAの探査機「マゼラン」の観測データをもとに作成された金星の北半球の画像/PL-Caltech/NASA

NASAの探査機「マゼラン」の観測データをもとに作成された金星の北半球の画像/PL-Caltech/NASA

(CNN) 金星への軟着陸を目的に設計されながら地球の周回軌道を抜け出せず、そのまま数十年が経過したソ連時代の宇宙探査機が、米東部時間の9日夜から10日早朝にかけて地球へ落下する見通しとなっている。専門家による最新の推計で明らかになった。

探査機は「コスモス482」と呼ばれ、1972年3月にソ連が打ち上げたとされる。金星の環境探査が目的だったが、機体は金星への移行軌道に乗ることができなかった。

その後の数十年間、コスモス482は無為に地球を周回し、徐々に落下し続ける状態となっていた。

天文学者などの専門家は長年この探査機を観測してきたが、現在、地表から数百キロの高度に存在する微細な大気抵抗の影響で機体の軌道経路が下がり続けている。

現時点で、直径約1メートルの円柱形の探査機が、米東部時間のだいたい9日午後10時から10日午前6時半の間に地表もしくは海面に落下すると予測されている。欧州宇宙機関(ESA)や米政府が出資するエアロスペース・コーポレーションなどの諸機関による4件の分析で明らかになった。

同様の予測は今週、宇宙交通の専門家も発表していた。落下が推定される時間帯は、事態が近づくにつれて狭まる見通し。

宇宙における物体の飛行の複雑さや予測不可能な因子により、当該の物体がいつ、どの地点で軌道を外れるのかを正確に見極めるのは非常に困難だ。

機能しなくなったロケット部品などの宇宙ごみは多くの場合、地球の分厚い大気の層にぶつかってばらばらになる。ばらばらになった破片は、落下した地域に脅威をもたらす恐れがある。

しかし金星への着陸を想定して作られたコスモス482は、大気圏再突入時の熱や圧力に耐え、無傷のまま地表に到達する公算が大きい。金星は、大気の密度が地球の90倍に達する。

コスモス482が乾燥した地表に落下する可能性は低いが、ゼロではない。その軌道が示すところによると、落下の可能性がある陸地は広大で、「アフリカ、南米、オーストラリア、米国の全域と、カナダの一部、欧州の一部、アジアの一部」にまたがるという。オランダ・デルフト工科大学の講師で宇宙交通の専門家、マルコ・ラングブルク氏は電子メールでそう述べた。

またエアロスペース・コーポレーションの宇宙ごみ専門家、マーロン・ゾルゲ氏は、落下を見届けようとする人々に対し、実際に地表に落下した場合は探査機から距離を取るよう強調した。古い探査機からは危険な燃料が漏れるなど、人へのリスクが発生する恐れもあるからだ。

落下を目撃した場合は「当局に連絡を取り」、「物体に干渉しないでほしい」とゾルゲ氏は呼び掛けた。

法律の話をすれば、当該の物体が帰属するのはロシアになる。1967年の宇宙条約が盛り込む規定では、宇宙に物体を打ち上げた国は当該の物体への所有権と責任を保持しており、たとえその物体が打ち上げから数十年後に地球に落下してもそれらが失われることはない。

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