気候変動による異常気象で食料品価格が高騰、社会に広範なリスクもたらす 新研究
ロンドン(CNN) 気候変動による異常気象が、世界各地で基本的な食料品の価格を押し上げ、社会全体への深刻なリスクをもたらしている――。そんな研究結果が新たに発表された。
バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターのマクシミリアン・コッツ氏が主導した研究によると、米カリフォルニア州の野菜からブラジル産のコーヒーに至るまで、多くの品目で近年、価格が急騰したが、これは2020年以前の記録を超える「極端な」異常気象によるものだという。
過去の研究では、高温が農作物の収穫量や供給網に影響を及ぼし、長期的に食料の生産費用にどのような影響を及ぼしているかが検証されてきた。今回発表された研究は、2022年から24年の間に世界18カ国で発生した16の事例を取り上げ、猛暑や干ばつ、大雨などが短期的に価格高騰を引き起こした実例を分析した。
例えば、22年11月、カリフォルニア州とアリゾナ州では、夏の猛暑と水不足の影響で野菜価格が前年同月比で80%上昇した。
韓国では、23年8月の熱波の影響でキャベツ価格が9月に70%上昇した。
24年1月、イタリアとスペインでの長期的な干ばつの影響を受け、欧州でオリーブオイルの価格が50%上昇した。メキシコも過去10年間で最も深刻な干ばつのひとつに見舞われ、果物や野菜の価格が20%上昇した。
24年9月の日本は、1946年の統計開始以降で最も暑い月となり、米の価格は48%上昇した。
世界のカカオ生産の約6割を担うガーナとコートジボワールでは、24年初頭に発生した熱波が気候変動によって平年よりも4度高かったとされ、この影響で同年4月の世界のカカオ価格は280%も急騰した。
今回の研究によれば、健康的な食品は、そうでない食品よりも高価になる傾向があるため、食品価格の高騰は、低所得層にとって果物や野菜のような栄養価の高い食品を控える原因になりがちだという。その結果、天候に左右される食品価格が、栄養失調や2型糖尿病、心疾患などの症状を引き起こす可能性があるとして「連鎖的な社会リスク」があると強調した。
異常気象が食料価格を押し上げることで全体的なインフレを悪化させ、それが政治的不安や社会的混乱につながる可能性もあると研究者は述べている。
研究を主導したコッツ氏は声明で、「温室効果ガスの排出を実質ゼロにしない限り、異常気象はさらに悪化し続け、すでに世界中で農作物に損害を与え、食料価格を押し上げている」と述べた。「人々はこれに気づき始めており、食料品価格の高騰は、生活の中で目にする気候変動の影響として、猛暑に次いで2番目に挙げられている」と付け加えた。
英リーズ大学の個体群生態学のティム・ベントン教授は今回の研究について、「供給不足は市場に必ず影響を与え、食料を購入する人々にとって価格上昇を招く」と指摘。その上で、「紛争や貿易摩擦などによって世界貿易がすでに圧迫されている状況で、世界情勢はより緊張し、争いが激化することで、食料価格への影響をさらに悪化させている」と述べた。ベントン氏は今回の研究に関与していない。
ベントン氏は、今後はますます不安定な状況が常態化し、永続的な「生活費」の危機につながる世界に直面することになると指摘。気候変動への対応を怠れば怠るほど、こうした事態は全員に対してさらに影響を及ぼすだろうとの見方を示した。