オープンAIのアルトマン氏、AIによる「詐欺危機」を警告
ニューヨーク(CNN) 米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は22日、人工知能(AI)によって悪意のある人物が他人になりすますことができるようになる可能性があり、世界は「詐欺危機」の瀬戸際にいるかもしれないと警告した。
アルトマン氏は、「私が恐れているのは、どうやらまだ一部の金融機関が多額の資金の移動やそのほかのことについて、音声認証を受け入れているということだ。チャレンジフレーズを言えば処理される。こんなことがまだ行われているのは常軌を逸している。AIは現在、人間がパスワード以外で認証する方法のほとんどを突破できる」と語った。
こうした発言は、米連邦準備制度理事会(FRB)で行われた経済・社会へのAIの影響に関する幅広いインタビューの一部。アルトマン氏は、米金融大手の代表を含む出席者に対し、AIが経済で果たす役割についても言及した。
ホワイトハウスは近く、「AIアクションプラン」を発表する見通しで、AI規制と米国のAI分野での優位維持に向けた方針を示す予定だ。オープンAIもこの計画に対して提言を行っており、最近は米議会周辺での活動を強化している。
オープンAIは来年初め、首都ワシントンに新たなオフィスを開設する予定で、約30人のスタッフが常駐する。この拠点では、政策立案者向けの新技術の紹介や、教員や官僚に対するAI研修、AIの経済的影響の研究、AI技術へのアクセス向上策の検討などを行う。
アルトマン氏はAIのリスクを認識しつつも、トランプ政権に対しては、過剰な規制は米企業の競争力を損なうとして慎重な対応を求めている。
AIが詐欺行為を加速させるのではないかとの懸念はアルトマン氏だけのものではない。
米連邦捜査局(FBI)は昨年、AIによる音声や映像の「クローン詐欺」に警鐘を鳴らした。AI音声技術を使って、子どもが危険にさらされていると信じ込ませ、金銭をだまし取ろうとする事件も複数報告されている。今月には、ルビオ国務長官の声をまねるAIを使った人物が外相や州知事、連邦議会議員に連絡を取ったと米当局が警告した。
アルトマン氏は「重大な詐欺危機が近づいているのではないかと非常に懸念している」と述べた。「いまは音声通話だが、やがてはビデオ通話や『フェイスタイム』のように現実と見分けがつかないものになるだろう」とし、オープンAIがそうした技術を開発しているわけではないとしながらも、AIが進化し続ける中で、世界はすぐにこの課題に直面することになるだろうとの見通しを示した。
雇用への影響は「誰にも分からない」
AIが雇用に与える影響については、IT業界の幹部からも懸念の声があがるが、アルトマン氏は「誰にも先のことは分からない」と述べた。
アルトマン氏は、もっともらしい予測がいろいろと語られているとしたうえで、「でも、誰もそれを予測できない。私の意見では、これはあまりにも複雑なシステムで、あまりにも新しく影響力のある技術なので、予測するのは非常に難しい」と語った。
アルトマン氏は「ある種の仕事全体がなくなるだろう」とする一方で、新しい種類の仕事が出現するとも述べた。100年先を見通した場合、未来の労働はおそらく、現在の労働者が考えるような「本当の仕事」としていないだろうと以前の予測を繰り返した。