ANALYSIS

マスク氏のスペースX、最悪のタイミングで「スターシップ」爆発

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

スペースXの宇宙船「スターシップ」爆発の瞬間

(CNN) 米実業家イーロン・マスク氏が自身の事業に注力し直す中、同氏の主要企業の一社が新たな失敗に見舞われた。宇宙企業スペースXの「スターシップ」ロケットが18日、地上での定期試験中に爆発し、炎上したのだ。

今回の爆発は、スペースXのスターシップにとって4回連続の失敗となる。マスク氏の他の企業や同氏自身のブランドは、政界進出によるダメージからの回復に苦戦している。

スターシップは、2027年までに米国人宇宙飛行士を再び月に送り込むという航空宇宙局(NASA)の目標達成を支援することになっている。NASAはこのミッションのためスペースXに最大約40億ドル(約5800億円)を支払う。同社は、18日の爆発以前の3回の打ち上げでは一部の要素の試験に成功したものの、いずれも飛行中に失敗している。

スペースXは長年にわたり、試験・開発段階での失敗は大惨事の前兆のように思えるかもしれないが実際にはそのようなことはないと主張してきた。同社は「迅速な反復開発」と呼ばれる設計哲学を採用しており、比較的低コストの試作機構築と、試験飛行の頻繁な実施を重視している。同社は、順序立てた時間を要する工学手法に頼るよりも、この手法のほうが、より迅速で安価なロケット設計を模索し、成功を保証できると考えている。

しかしスターシップの激しい爆発は、マスク氏がトランプ政権での物議を醸した任期を終え、事業に復帰し、自身の評判回復に努めているさなかに起きた。数カ月にわたりホワイトハウスの最高顧問を務め、政府効率化省(DOGE)を率いた後、マスク氏は現在、常勤の政府業務から一歩退き、テスラを含む自身の企業に改めて注力している。テスラはマスク氏とトランプ政権との結びつきによって苦戦を強いられている。

復帰後、マスク氏はテスラの安全性と信頼性のイメージ向上に努めている。同社は22日にテキサス州オースティンで無人運転サービス「ロボタクシー」の運行開始を目指しているが、初期段階は20台程度に限定される見込みで、マスク氏は日程が変更される可能性もあるとしている。

サービス開始に先立ち、テキサス州の議員団は、自動運転に関する新法が施行される9月まで開始を延期するよう要請している。ビジネスインサイダーは先に、テスラがメンテナンスのためオースティン工場の「サイバートラック」と「モデルY」の生産ラインを1週間停止すると伝えた。こうした停止は今年3度目。これを受け、テスラの株価は今週下落したものの、その後はやや持ち直している。自動車市場調査会社JATOのレポートによると、テスラの販売が急落している欧州では、中国の自動車メーカーBYDが電気自動車(EV)の販売台数で初めてテスラを上回ったという。

マスク氏は自身の人工知能(AI)企業xAIでも、難題を抱えている。ブルームバーグ通信は、xAIについてAIモデルの構築コストが「限られた収益を上回り」、「毎月10億ドルを溶かしている」と報じた。

マスク氏はこの報道を一蹴。「ブルームバーグはでたらめだ」とX(旧ツイッター)に投稿した。

マスク氏は、自身のAIチャットボット「Grok」が政治的動機に基づく暴力に関するファクトチェックを投稿した際にも公に反論。「データは2016年以降、右翼による政治的暴力がより頻繁かつ有害になっていることを示している」としたGrokの回答は公開されているほとんどのデータと一致している。

しかし、マスク氏はこれに同意せず、「これは客観的に見て誤りであり、大失態だ。Grokはレガシーメディアのまねしているのだ。改善に取り組んでいる」と投稿した。

マスク氏は、特にスペースXでの失敗を軽く見ているようだ。先月にはスターシップが来年末までに火星への初飛行を行うことを期待していると述べたが、この目標が実現する可能性はますます低くなっている。

スターシップの爆発を受け、マスク氏は「かすり傷程度だ」と投稿し、「RIP Ship 36(Ship 36、安らかに眠れ)」というテキストとミームを投稿した。

あるユーザーがGrokに、なぜマスク氏はミームを投稿しているのかと尋ねると、Grokは「タイミングから判断すると、6月18日に発生したスペースXのスターシップ爆発に関するユーモラスなコメントであり、特定の人物を狙ったものではなさそう。マスク氏はこうした失敗を受け流すためにミームをよく使う」と回答。マスク氏はこれに「的中」を示す絵文字でリアクションした。

本稿はハダス・ゴールド記者とジャッキー・ワトルズ記者による分析記事です。

メールマガジン登録
見過ごしていた世界の動き一目でわかる

世界20億を超える人々にニュースを提供する米CNN。「CNN.co.jpメールマガジン」は、世界各地のCNN記者から届く記事を、日本語で毎日皆様にお届けします*。世界の最新情勢やトレンドを把握しておきたい人に有益なツールです。

*平日のみ、年末年始など一部期間除く。

「Analysis」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]