(CNN) 大手芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」に所属していた元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんは12日、自分や他の若い男性らが同社経営者で日本の芸能界の実力者だった故ジャニー喜多川氏から性的被害を受けていたと名乗り出た。
ブラジル出身の両親を持つシンガー・ソングライターのオカモトさんは記者会見で、15歳だった2012年から4年間、繰り返し喜多川氏からの性的被害に遭っていたと主張した。喜多川氏は19年に87歳で亡くなった。
オカモトさんによると、喜多川氏が都内に持つタワーマンションの最上階の部屋に宿泊する際に被害に遭った。そこには他のジャニーズJr.のメンバーと泊まることが多かったという。
オカモトさんは日本外国特派員協会で記者会見を開き、被害を受けた他のメンバーも名乗り出てくれることを期待すると語った。
喜多川氏は長年にわたり日本最大級の芸能事務所を率いてきた。人気少年グループを生み出し、10代のアイドルを音楽や俳優業でデビューさせる手腕で知られていた。メディアやエンターテインメント業界において、数十年にわたり強力な、影響力のある人物として存在した。
ジャニーズ事務所は13日、オカモトさんの主張に対してCNNに声明を寄せた。
声明では、同社が19年の前代表の死去に伴う経営陣の変更を踏まえ、新しい環境に即した、社会から信頼を得られる透明性の高い組織体制と制度整備を重要課題と位置づけてきたと述べた。
さらに、経営陣、従業員による聖域なきコンプライアンス順守の徹底、偏りのない第三者の専門家の協力を得てのガバナンス体制の強化への取り組みを今年1月に発表していると続けた。ただ、オカモトさんの主張に対して直接見解を示すことはしなかった。
喜多川氏に対する被害の訴えはだいぶ以前からあった。1999年、週刊文春は喜多川氏から性的虐待を受けたと告発する若者の記事を掲載。喜多川氏はこれを受け、名誉毀損(きそん)による損害賠償を求めて同誌を提訴した。東京高等裁判所は2003年、掲載された性的虐待の主張は名誉毀損に当たらないと判断して、一審判決の一部を覆した。喜多川氏は上告したが、最高裁判所は受理しなかった。
喜多川氏は性的被害に関して刑事訴追されたことはない。同氏は生前、そうした被害の訴えをすべて否定していたと報じられている。
ほかのメンバーはオカモトさんの番だとわかっていた
オカモトさんがジャニーズ事務所に入ったのは12年2月、中学生のときだった。芸能界で成功を夢見る若者向けに喜多川氏が立ち上げ、Jポップのデビュー前の卵が集まるジャニーズJr.のメンバーとなった。
オカモトさんによると、喜多川氏はよくジュニアのメンバーに自分のマンションに泊まるように誘い、「お気に入り」を選んでいた。オカモトさんが喜多川氏から「早く寝なよ」と言われたとき、他のジュニアはオカモトさんの番が来たと「気づいたと思う」とオカモトさんは語る。
オカモトさんによれば、最初に性的被害に遭ったのは12年3月。仕事が遅くなり、他のジュニアと喜多川氏のマンションに泊まることになった。
オカモトさんは他のメンバーから、喜多川氏の部屋か、そこに近い部屋で寝ないと、翌日喜多川氏の機嫌が非常に悪くなるという話を聞いていた。
オカモトさんによると、喜多川氏のスリッパの足音が自分の部屋に近づいてきた。その後喜多川氏が布団をはぎとり、オカモトさんの横に寝た。
喜多川氏はオカモトさんの足のマッサージを始め、性器に触り、その後オーラルセックスをしたという。
オカモトさんは翌日、喜多川氏から理由を告げられることなく1万円を渡されたという。
オカモトさんはジャニーズ事務所を辞める16年まで、15~20回ほど喜多川氏から性的被害を受けたと語った。
オカモトさんによれば、所属していた4年間で100~200人ぐらいのジュニアが喜多川氏のマンションに行き、メンバーは時期によって変わっていた。そのほとんどが被害を経験しているとの認識をオカモトさんは示す。
「見ているとか、隣で行っていたこともあったので、同じ部屋で。はっきり分かるのは僕以外に3名ほど。正直、ほぼ全員だと僕的には思っている。家に来たらほぼ全員という認識で僕はいる。逆に、ないほうが珍しいという認識でいる」
100~200人全員被害を受けているかとの質問には「ほとんどみなさんあると思う」と答えた。
オカモトさんは長年、自分の経験を話すことはできなかったという。
「僕だけじゃないので。僕は顔出しをして話しているんですが、匿名の方もたくさんいるので、それがもしかしたら変わるかもしれないと思っている。希望は抱いている」
オカモトさんは、メンバーが喜多川氏の行為を断った場合、仕事から干されるとの認識も示した。
「直接ジャニーさんが『それをしないと売れないよ』とは言わないが、そもそもジャニーズというのは、ジャニーさんが気に入っている子たちだったり、推している子たちが基本的にデビューする」
「ちょっと特殊だと思う。ジャニーさんの横にいたりとか、現場で。ジャニーさんがピックアップしてドラマに決まったりとか、ジュニア内でグループ組んだりとか」
「ジュニアの中でもやっぱり『マンションに行かないと売れないよね』みたいなことだったり、むしろ『自分から行かないといけないよね』みたいな、好かれたいみたいなことが多かった。その認識でみなさんいる」
オカモトさんは喜多川氏に対する長年の被害の主張が真剣に取り上げられなかったことに憤りを感じたという。
オカモトさんは喜多川氏のおかげで「人生が変わった」と話す一方、「ジャニーさんが当時、15歳の僕や、そのほかのジュニアに対して性的行為をしたことは悪いことだと思う」と述べた。