100歳越えの住民多数、伊サルデーニャ島の長寿の村を訪ねる

100歳を超えて生きる人が多く住むイタリア・サルデーニャ島の村、ティアナ

2018.10.15 Mon posted at 18:06 JST

(CNN) 世界で初めて110歳まで生きた男性、アントニオ・トッデ氏は、イタリア・サルデーニャ島のティアナという村に住んでいた。

ティアナのある地域は、センテナリアン(100歳以上の人)の割合がサルデーニャ島の他の地域やイタリア本土の3倍もある。

長生きに不可欠な要素として優れた遺伝子、食事、運動が挙げられることが多く、実際ほとんどの場所ではこれら3つが重要だ。しかし、地中海上のこの長寿地域の研究によると、社会的交流も同じくらい重要かもしれない。

この地域で人々を観察すると、家族から世話や介護を受けたり、地域活動に密接に関与すると、総合的な幸福に欠かせない健康な精神状態の維持に役立つことが分かる。

サルデーニャ島の「ブルーゾーン」

2000年代初頭、人口統計学者で医師でもあるジョバンニ・ぺス氏は、サルデーニャ島中部のいくつかの村の死亡率が非常に低く、平均寿命が非常に高いことを発見した。ぺス氏が地図上で各コミュニティの場所に印を付けているうちに、青い印の集合体ができた。

ぺス氏はその地域を「ブルーゾーン」と名付けた。今や「ブルーゾーン」は超長寿地域を指す言葉として使われ、これまでにコスタリカのニコヤやギリシャのイカリア島など、5カ所がブルーゾーンに認定されている。

世界で初めて110歳まで生きた男性、アントニオ・トッデ氏の息子のトニーノさん

しかし、サルデーニャ島の長寿地域が他の長寿地域と異なるのは、高齢男性の割合が平均を上回っている点だ。ぺス氏によると、大半の欧米諸国では100歳の高齢者の男女比は1対4で女性が多いが、サルデーニャ島中部の地域では1対1だという。

この理由を探るため、ぺス氏はまずこの地域の住民の遺伝子プールを分析した。ぺス氏は、この地域が地理的に孤立していることから遺伝的多様性が高まり、それが地元住民の長寿につながっているとの説に賛同していた。

しかし、遺伝因子ではこの地域の平均寿命のわずか20~25%しか説明できないという。

一方、高齢者を対象とした聞き取り調査や過去のデータから、社会的、心理的要因も遺伝子と同じくらい重要であることが分かった。

サルデーニャ島のセンテナリアンに関する著書を持つルイジ・コルダ氏は、2年間かけてバルバジア、オリアストラ、トレクセンタ、メディオ・カンピダーノの各地域のセンテナリアンたちの写真撮影やインタビューを行った。その結果、家族が果たす重要な役割を発見した。

コルダ氏は自著の中で、「それだけ長生きできるか否かは、基本的に家族次第」と述べ、さらに次のように続けた。

「自分は今も大切な存在であると感じるとともに、家族の注目の的であり、家族の長であるという事実が高齢者を活発にし、彼らに前進する強さを与える。これこそが、遺伝子、食事、宗教に加え、家族が重要である根拠だ」

またコルダ氏が出会ったセンテナリアンたちは皆、大変健康で、薬も服用するにしてもあまり服用せず、さらに驚くほど頭脳明晰だという。

サルデーニャ各地のセンテナリアンたちの写真を撮っているルイジ・コルダ氏の作品

社会生活と社会的関係

サルデーニャ島南部にあるカリアリ大学の心理学者、マリア・キアラ・ファスタメ氏によると、イタリア北部の多くの地域とは対照的に、この地域では高齢者を介護施設に入れるのは珍しいという。

高齢者は親戚や隣人が面倒を見ており、家庭は若者と高齢者が毎日触れ合う場になっている、とファスタメ氏は語る。高齢者は負担とは見なされず、むしろさまざまな価値や地元の知識を(若い世代に)伝える貴重な存在と考えられている。

高齢者も村の社会生活に組み込まれ続けることにより、そのコミュニティの中で積極的かつ大切な役割を維持できる、とファスタメ氏は言う。そうすれば高齢者の頭は常に冴えた状態になる。

「身体活動にしろ、文化活動にしろ、多くの活動に参加していれば、それは頭脳がより効率的に働いている証拠だ」(ファンタメ氏)

カリアリ大学心理学科が2017年に行った研究でも、サルデーニャ島のブルーゾーンに住む高齢者は、他地域の高齢者よりも多くの社会活動やレジャー活動に参加していることが分かった。

精神的に健康な人ほど幸福感は高い

ぺス氏によると、サルデーニャ島は住民の健康状態が特別良好であるわけではなく、さらに低所得、風土病で知られているという。それでも住民らが晩年に襲うさまざまな困難に対処してこられたのは、住民同士の緊密な関係のおかげ、とぺス氏は指摘する。

社会活動への積極的な参加が身体的、精神的健康状態の持続につながるという

「彼らはさまざまな活動により積極的に参加したため、じっと座っている時間が短く、身体活動をしている時間が長かった。これらの要素が相まって、彼らは身体的にも精神的にも健康で幸福になった」とぺス氏は分析する。

しかし、長寿の答えを探しても唯一の説明はないとぺス氏は考えている。「どちらかと言うと、さまざまな要因の相互作用によるものだろう」(同氏)

孤立や気持ちの落ち込みを避けるために社会的構成要素は重要だが、それらが他の要因と結びつくことにより、人々が100歳まで(さらにそれ以上)生きられるようになる、とぺス氏は言う。われわれが上手な年の取り方をより深く理解するには、さらなる研究が必要だ。

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