汚職捜査機関が独立性失うおそれ、法改正に大規模な抗議デモ ウクライナ

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汚職捜査機関の独立性を実質的に失わせる改正法に抗議する人々=22日、ウクライナ首都キーウ/Patryk Jaracz/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

汚職捜査機関の独立性を実質的に失わせる改正法に抗議する人々=22日、ウクライナ首都キーウ/Patryk Jaracz/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

(CNN) ロシアによる全面侵攻から3年以上が経過したウクライナで、戦争開始後初となる大規模な反政府抗議活動が発生した。ゼレンスキー大統領が反汚職機関の権限を制限する動きを見せたことに対し、国民の怒りが噴き出した形だ。

22日には、首都キーウをはじめ西部のリビウ、東部のドニプロ、南部のオデーサでも市民が集まり抗議の声を上げた。議会が、汚職を捜査する国家反汚職局(NABU)と訴追権限を持つ反汚職専門検察(SAP)の二つの機関の権限を、政治任命された検事総長に移す法案を可決したことが発端だ。

批判派は、この動きがNABUとSAPの独立性を損ない、ウクライナの欧州連合(EU)加盟への道を遠ざけると警告する。EUはウクライナに対し、加盟に必要な条件として強力な反汚職措置の実施を求めている。米政権も2023年に腐敗根絶に向けてさらなる取り組みを行うよう求めていた。

ウクライナは長年、欧州でも最も汚職の蔓延(まんえん)した国の一つとされてきた。ゼレンスキー大統領の側近であるチェルニショフ元副首相ら複数の高官にも汚職の疑惑が持たれている。

今回の法案は、議会を迅速に通過し、22日遅くにゼレンスキー大統領が署名して成立させた。ゼレンスキー氏はその日の夜の演説で、「両機関は今後も機能し続ける」と強調しつつ、法改正は「ロシアの影響」から機関を排除するために必要な措置だと主張した。前日には当局がこれら機関の一つを家宅捜索し、ロシアの特殊機関と関係していた疑いで2人の職員を逮捕していた。

法改正に反対する人々が集まった集会=22日、ウクライナ西部リビウ/Roman Baluk/Reuters
法改正に反対する人々が集まった集会=22日、ウクライナ西部リビウ/Roman Baluk/Reuters

反対派は、新法が検事総長に捜査への介入や案件の打ち切りを可能にする権限を与えるため、両機関はもはや独立して活動できなくなると懸念している。

ゼレンスキー大統領は2019年の選挙で「汚職撲滅」を最も重要な公約に掲げた。政治経験ゼロの元コメディアンだったゼレンスキー氏は、テレビドラマで大統領役を演じていたことでも知られるが、有権者の不満を見事にすくい上げて当選した。

戦時下でもゼレンスキー大統領は、汚職疑惑で複数の高官を解任し、反汚職に向けた施策を実行に移してきた。

その取り組みは、EUや国連、主要7カ国(G7)など国際社会からも評価されていた。

だが今回の法案をめぐり、国際社会からも批判が相次いでいるほか、国内の批判派からは、ゼレンスキー氏の反汚職公約は空約束に過ぎなかったと失望の声が上がっている。

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