揺れが何日も続く、群発地震襲う島での生活
東京(CNN) 学校の校長を務める当房(とうぼう)芳朗さん(52)は、絶え間ない地震に見舞われる鹿児島県十島村の悪石島に残った数少ない住民の一人だ。家族は安全な土地にいるが、自身は島に残ることを選んだ。
トカラ列島の悪石島周辺では、過去3週間で1800回以上の地震が発生。疲労と恐怖で眠ることもできないと当房さんは話す。
同僚らを含む島民49人は6日、フェリーで本土に避難した。全島民の約4分の3に相当する数だ。気象庁によると3日には最大規模の地震が襲い、家具が倒れた他、立っているのも難しいほどの揺れが発生した。
それでも、当房さんは島内唯一の学校を守るため島に残り、CNNの取材に答えた。現在学校は避難所となっている。
何日も繰り返し起こる揺れのせいで非常な不安と恐怖を覚え、眠ることも困難だと、当房さんは語った。
ひどいときにはいつまで経っても地震が収まらず、大きな揺れが遠くから近づいてくるのが寝ていても分かるという。

悪石島周辺では、過去3週間で1800回以上の地震が発生した/Kyodo/Getty Images
6日の緊急避難時には校庭を島民ら24人に開放。建物が倒壊する心配のない場所を提供した。これまでのところ、校舎に被害は出ていない。
真夜中前後に避難し、午前1時半前後に寝室に戻ったもののよく眠れなかった。非常に強い揺れも感じたという。
それでも校長としての責任から島に残り、自治体や地元住民の取り組みを支援することを選んだと当房さんは話す。家族は現在九州本土の鹿児島市内で暮らしているという。
夜間は自宅にいるが、真夜中であっても常に学校へ避難できるようにしていると、当房さんは語った。
十島村役場の職員、有川孝志さんは、昼夜を問わず襲う地震のために村が眠りを奪われ、疲弊させられていると明かす。
当房さん以外にも、消防士や農家、電力会社従業員といった人々が島に残る。医師と看護師も一人ずつ残っている。
当房さんの学校の児童、生徒たちは、8日にオンラインで授業を再開した。
同じくトカラ列島を構成する小宝島では、地元当局が住民15人の避難を確認。48人が島内に残っているとした。
島内の学校の松野浩三校長によれば、全てのスーパーや店舗は閉店し、日用品は現在もフェリーで鹿児島から運ばれてくる状況だという。
眠れない夜が続いたという松野さんだが、CNNの取材に対し地震は徐々に収束しているとの見方も示した。学校に通う児童、生徒の体調は良好で、避難した半数はオンライン、島に残った半数は対面での授業にそれぞれ出席しているという。

悪石島から避難するフェリーに乗船する島民や観光客=7月4日撮影/Kyodo/Getty Images
12の島で構成されるトカラ列島には約700人の住民が暮らす。ある学校のウェブサイトには、悪石島での先月の避難訓練で児童が机の下に隠れる様子が掲載されている。
3日に発生した最大規模の地震に加え、現地では震度3クラスの地震が128回発生。震度4は少なくとも39回、震度5弱は4回、震度5強は3回それぞれ発生した。震度5強の地震では、支援なしに移動するのが困難になる。
当局によると今回の地震による津波の危険はないものの、地盤は依然として緩んでいるという。地元メディアが報じた。住民に対しては、建物の倒壊や地滑りへの警戒が呼び掛けられている。
日本では地震は珍しい現象ではなく、世界で起こるマグニチュード(M)6以上の地震の5分の1は日本で発生するとされる。
日本は強い地震や火山活動を特徴とする太平洋両岸の「環太平洋火山帯」に位置する。長さ約4万キロのこの地域には世界の活火山の75%が集中し、全地震の約9割がここで発生するという。
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原文タイトル:‘Shaking repeatedly for many days’: Life on an island suffering hundreds of little earthquakes(抄訳)