人間だけじゃなかった、流行追いかけるチンパンジー みんなを真似て仲間入り
(CNN) アフリカの野生生物保護区に生息するチンパンジーの間で、耳の穴やお尻の穴に草木を差し込んでぶら下げる「ファッション」が流行する現象が観察された。
この行動は、ザンビアの保護区でオランウータンを観察していた研究チームが2010年に発見した。1頭のメスのチンパンジーが耳の穴から草木をぶら下げ始めたところ、すぐに群れの仲間が真似して同じ行動をするようになったという。論文筆頭著者でオランダのユトレヒト大学のエド・ファン・レーウェン氏が9日、CNNに語った。
チンパンジーたちは痛みやかゆみを抑えるために草木を使用したわけではなさそうだった。いずれも「非常にリラックスした」様子だったという。
このためそうした行為は「ファッショントレンドまたは社会的伝統」だったとファン・レーウェン氏はみている。
興味深いことに、それから10年以上たって、同じ保護区で別のチンパンジーの群れが同じ行動を始めた。中にはお尻の穴に草木を差し込む個体もいた。
この群れの生息場所は、最初にこの行動を始めた群れの生息場所から15キロほど離れていた。そこで飼育員に尋ねたところ、保護区の特定区域の飼育員の間で、マッチ棒や小枝を使って耳掃除する習慣があったことが判明。この区域の飼育員の行動をチンパンジーが真似て、群れの仲間に伝わったらしい。
その後、同じ飼育員が世話をするようになった別のチンパンジーの群れも、草木をお尻の穴に差し込むのが習慣になった。
「この流行は社会的学習を通じて広まった」とファン・レーウェン氏は解説する。
オランダの動物園のチンパンジーの間でも、1頭のメスがまるで赤ちゃんを抱っこしているかのような格好で歩く動作を始めたところ、すぐに全てのメスがこの歩行スタイルを採用した事例があるという。
この群れに新しく2頭のメスが加わった際は、同じ歩き方をすぐ身に着けたメスの方が早く仲間に溶け込んだのに対し、流行の歩行スタイルを採用しなかったメスは受け入れられるまでに時間がかかった。
人間と同様に、チンパンジーのこうした行動には仲間に入って社会関係を円滑にする目的があるとファン・レーウェン氏はみる。
草木を差し込む行動が最も多く観察されたのは、チンパンジーたちが集まって毛づくろいしたり遊んだりしてくつろいでいる時間だった。

メスのチンパンジー「アイミ」は枝を耳に入れている/Jake Brooker/Chimfunshi Wildlife Orphanage Trust
保護区のチンパンジーたちは、天敵の心配をしたり群れの間で争ったりする必要がないことから、野生の個体に比べてゆったりできる時間が長い。
ただ、野生のチンパンジーも恐らくそうした行動を身に付ける可能性はあるとファン・レーウェン氏は指摘し、まだ観察されていないだけかもしれないと言い添えた。
この研究について、霊長類に詳しい英オックスフォード大学のエロディ・フレイマン氏は「チンパンジーと人間の飼育員の間で種をまたいだ模倣が起きた可能性があるという今回の発見は大きな驚きだった」と述べ、「もしチンパンジーに人間の真似ができるなら、人間以外の別の種を真似して学習することもあり得るのか」と問いかけている。