米中軍用機の接近、両国が動画公開 リスク浮き彫りに

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中国軍機、米軍機に「異常接近」

(CNN) 南シナ海上空で先月末、中国軍の戦闘機が米空軍の偵察機に異常接近した事案をめぐり、両国がこのほど動画を公開した。専門家からは今回の接近について、事態が簡単に思わぬ方向に向かい、二大大国間の軍事衝突につながりかねないことを示す警鐘と受け止めるべきだとの指摘が出ている。

この事案は昨年12月21日、南シナ海北部の上空で発生した。米国は公海上空だったと指摘している。

中国海軍のJ11戦闘機は「安全性に欠ける機動」(米軍)を行い、約30人を乗せていた非武装の米偵察機RC135の機首まで約6メートル以内に接近。米インド太平洋軍の先月28日の声明によると、RC135は衝突を避けるために回避機動を強いられた。

インド太平洋軍が公開した動画には、中国の戦闘機がRC135の左やや上方を飛行し、徐々に機首に接近してから遠ざかる様子が映っている。RC135は1960年代から70年代のボーイング707型旅客機に似た4発エンジンの機体。

一方、中国人民解放軍南部戦区は軍の公式サイト上で異なる解釈を提示し、米軍機の側が「突然飛行姿勢を変え、中国機を左に追いやった」と主張。「こうした危険な接近により、中国軍機の飛行の安全性に深刻な影響を与えた」としている。

中国が公開した戦闘機側からの動画を見ると、RC135が戦闘機の後方に接近しているようにも見える。

CNNの取材に応じた航空専門家や軍事専門家は両方の動画を見たうえで、中国軍機は完全に誤った進路を取っており、米軍機にこれほど接近する必要はなかったとの見方を示した。

元オーストラリア空軍将校で現在はグリフィス大学アジア研究所に所属するピーター・レイトン氏は「RC135は当時、公海上空にいた。RC135は大型で動きの遅い、機動性に乏しい航空機だ。接近してくる小型で高速かつ機動性の高い機体の方が距離を取り、問題が起きないようにする責任がある」と指摘した。

似たタイプの偵察機を操縦した経験を持つ米空軍の退役将校、ロバート・ホプキンズ氏も、中国の解釈に異を唱えた。

「中国の反応はあまりに現実から乖離(かいり)している。フィクションの世界だ。非武装の旅客機サイズの機体が、小回りの利く武装した戦闘機に向かっていくことはありえない」(ホプキンズ氏)

ただ、ホプキンズ氏は米軍機が「回避機動」を強いられたとの言い方は「大げさ」だとも述べ、米軍は今回の事案を誇張する危険を冒しているとの見方を示した。

米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)」でインド太平洋地域の防衛政策を専門とするブレーク・ハージンガー氏は、米中の軍事関係の現状を見れば、偶発的な出来事が武力衝突を招く可能性はあると指摘。「人民解放軍が米国との間のホットラインや議論の場を事実上破壊したことを思い出すべきだ。異常接近から事態が誤った方向に進んだ場合、事態の激化を抑えるために高位将校が取れる手段はかつてなく少なくなっている」と述べた。

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