ロシアに反撃のウクライナ、米軍開発のレジスタンス戦法を活用
当初、新たなドクトリンに熱意を示していたのはエストニアとリトアニア、ポーランドだけだった。だが、ロシアが2014年にほぼ無血でクリミアを占領・併合したことで欧米は驚きに包まれ、このレジスタンス手法への関心が急激に高まった。
米軍欧州特殊作戦コマンドの報道官によると、15年以来、少なくとも15カ国が何らかの形でこのレジスタンス・ドクトリンの訓練に参加した。
昨年11月半ば、バイデン政権がロシアのウクライナ侵攻に対する警鐘を鳴らし始めたときには、ハンガリーがレジスタンス作戦概念に関する会議を開催。会議にはウクライナ特殊作戦部隊の司令官も他の十数カ国とともに参加していたという。
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、レジスタンス概念への関心は一層高まった。
米当局者の1人によると、「特にバルト諸国では、国家レベルでのレジスタンス作戦概念の実施について議会で活発な議論が交わされている」という。
バルト諸国のレジスタンス
ウクライナのロシア侵攻から3カ月近くが経過した5月、リトアニア議会は市民の抵抗に関する新たな戦略を採択した。これは厳密な意味での占領への抵抗よりも幅広いものとなる。
リトアニア国防省の報道官によると、レジスタンスの準備には国防の一環として、国を守る意識の育成や市民の軍事および非軍事的な知識、技術の向上などが含まれる。
レジスタンス・ドクトリンの存在や計画の一部は、潜在的な攻撃への抑止力とするため意図的に公表されているという。伝統的な軍事抑止や核抑止というよりも、ロシアの好むハイブリッド戦争に対する抑止が狙いとなる。ただ、計画の詳細や国内の組織については極秘にされている。
ロシア北西部と国境を接する人口約130万人のエストニアでは、これまでも常に市民の抵抗が国防計画の一部となってきた。
志願兵で構成されるエストニア国防組織の報道官は、「どのエストニア人にとっても他に選択肢はない」「もしロシアに攻撃された場合、独立のために戦うか死ぬかどちらかだ」と話している。