中国人留学生の入国規制、中国よりも米国にとって損失か

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中国に関する記者会見に出席したトランプ大統領ら=2020年5月、米ホワイトハウス/Mandel Ngan/AFP/Getty Images

中国に関する記者会見に出席したトランプ大統領ら=2020年5月、米ホワイトハウス/Mandel Ngan/AFP/Getty Images

同布告は、中国は軍の近代化や能力強化の一環として、米国の機密性の高い技術、知的財産を入手するために「広範かつ莫大な予算を投じた」組織活動を行っていると述べているが、中国政府は「政治的迫害」と強く非難している。

この布告の影響を受けたフーさんや他の中国人留学生たちは、ジョー・バイデン氏が大統領になれば布告は撤回されると期待していた。

しかしバイデン政権は、今年5月に中国人への学生ビザの発給は再開したが、布告は維持している。米国務省は、この政策の対象は「限定的」で、影響を受けるのは中国人の学生ビザ申請者のわずか2%未満にすぎず、米国の研究事業や国家安全保障上の利益を守るために必要としている。

学生はスパイか?

米国務省は昨年、中国人留学生の入国制限措置が昨年5月に発動されて以来、大統領布告の下で少なくとも1000人の留学生のビザが取り消されたことを明らかにした。

中国外務省は、米国に対し中国人留学生の入国規制を撤回するよう強く求めているが、米国内で数人の中国人がスパイ容疑で起訴されているのも事実だ。最近では、生物学的研究のサンプルを中国に密輸しようとした中国人留学生が起訴されたり、電気工学を学ぶ別の中国人留学生もスパイ活動を行った容疑で起訴されたりした。

中国に関する著作のある作家エリック・フィッシュ氏は、米国内で中国人によるスパイ活動が行われているのは間違いないが、現在の米国の政策は恣意(しい)的で、対象範囲も広すぎると指摘する。フィッシュ氏は、入国制限の標的とされている中国の大学は軍事大学ではなく、何千人もの学生を抱える民間大学であり、その大半は軍とは無関係だと付け加えた。

フィッシュ氏は、中国人留学生の入国規制について、仮にトランプ前大統領が発動していなかったとしてもバイデン大統領がこの政策を発動していたとは考えていないものの、現在の緊迫化した米中関係を考えると、今、規制を撤回するのは政治的に賢明な選択とはいえないのかもしれないとの見方を示した。

フィッシュ氏は「バイデン氏がこの政策を撤回すれば、共和党議員らから、中国に甘すぎる、中国のスパイ活動を放置するのか、と批判を浴びるだろう。ただ実際は、必ずしもそのような状況ではないのだが」と述べた。

中国人留学生を締め出すことによる損失

中国人留学生の入国規制の影響を受けるのは留学の機会を逃した中国人留学生だけではない。専門家は、米国の研究の質にも影響が及ぶ可能性があると警告する。

米国で学ぶ中国人留学生のうち、入国規制の影響を受ける学生の割合はごくわずかだ。しかし、彼らが行っているのは最も重要な研究の一部であり、さらに米国内のSTEM分野の大学院生のおよそ16%が中国人だ。また米シカゴに拠点を置くシンクタンク、マクロ・ポロによると、一流の人工知能(AI)研究者のおよそ3分の1は中国で学士号を取得するが、そのうちの半数以上が卒業後に米国で研究、就職、生活をしているという。

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