人里離れた山頂で遺体が見つかった双子の兄弟、警察は「謎が解けた」と主張 米南部
姉弟は仲が良く、パウエルさんが独立してからも2人は毎週、その部屋に立ち寄った。ソファーに体を投げ出してネットフリックスの画面をスクロールしたり、あらゆることを語り合ったりしたという。
そんな訪問は、最後のぎりぎりまで続いた。
GBIによると、2人の住所に3月5日、銃弾が配達された。ナージルさんが注文していたという。
ナージルさんがボストン行きを予定していた前日の6日、2人はほぼ丸一日をパウエルさんと過ごした。アトランタ郊外チャンブリーにある専門学校の見学につきあい、夜は同市内のパウエルさん宅でテレビアニメ「リック・アンド・モーティ」を見て、午後11時ごろに解散した。
パウエルさんはこの夜、2人から人生で本当にやりたいことは何かと尋ねられたという。
「なにも不安や恐れがなかったら何をするかと聞かれた。私はずっとダンサーになりたかったので、踊りがしたいと答えた」――パウエルさんは眼鏡の奥に涙を光らせながら、そう語った。
「すると2人は、そうすればいい、本当にやったらいいと思う、と言った。それが私への最後の言葉だった」
起業家が夢だった
2人は幼い頃、親族でもほとんど見分けがつかないくらいよく似ていた。
だが成長するにつれ、小さな違いがみられ始めた。2人の子守をしていたおばのヤスミンさんによると、ナージルさんのほうが目が大きく、積極的で声も大きかった。
子どもの頃はおそろいの服装だったが、10代になると別々の髪型にしたので、見分けがつきやすくなった。カーディルさんはツイストヘアが好きで、ナージルさんは編み込みやスポーツ刈りにしていた。

ナージルさん(左)とカーディルさん。一卵性双生児の2人は19歳だった/Courtesy Yasmine Brawner
2人は2023年5月に同じ高校を卒業し、専門学校に進んだ。目や髪型と同じように、それぞれの目標も少し違った。
カーディルさんは航空機整備の学校に通い、ナージルさんは自動車修理を学んでいた。
「カーディルは『ナージルが自動車を直して、ぼくは航空機を直す』と言っていた」と話すのは、もう1人のおば、サブリヤ・ブラウナーさんだ。
サブリヤさんによれば、2人は人に雇われる気にはなれないからと、起業家を目指し、スポーツウェアのブランドを立ち上げる計画も話し合っていた。
携帯電話でモチベーション動画もよく見ていたという。

ジョージア州に集まった双子の親族。立っているのが左からサミラ・ブラウナーさん、タモニカ・ブラウナーさん、シャニア・ブラウナーさん、ラヒム・ブラウナーさん、サブリヤ・ブラウナーさん。座っているのは左からヤスミン・ブラウナーさん、カイリー・パウエルさん/Lynsey Weatherspoon/Redux for CNN
親族がたどった現場へのルート
先月27日の朝にヤスミンさん、サブリヤさんらおば3人とおじのラヒム・ブラウナーさんが集まり、アトランタ郊外から車でベル山に向かった。おばとおじは全員、2人の実母のきょうだいだ。
よく知らない地域だったので下調べをして、曲がりくねった山道を走れるラヒムさんのジープに乗り込んだ。
ラヒムさんは「何が起きたかを知るために、あの子たちと同じ道をたどりたかった」「私のジープでも登るのが大変だった。2人は長時間のドライブが嫌いで、運転もほとんどできない。普段からは考えられない行動だ」と話す。
公園の入り口に黄色いゲートがあった。2人の車はここで見つかったとみられる。一行の車はそこからさらに少し進み、「急坂注意」の標識を通り過ぎて頂上に着いた。4人はそこで車から降りて歩き回った。
頂上へのゲートは毎晩6時から翌朝8時まで施錠される。2人が夜10時24分までローレンスビルのスタンドにいたなら、山にはいつたどり着き、どうやってゲートを越えたのか。
「とにかくわけが分からない」「2人が行くにはあまりにもあやしげな場所だ」と、ラヒムさんは語った。
悲劇に打ちひしがれる遺族
CNN取材班は今月、2人の自宅を訪ねた。玄関で対応した女性は義母のルイスさんと名乗った。2人の実父である夫ともども喪失をまだ乗り越えられずにいると話し、それ以上のコメントは避けた。
サブリヤさんによると、アトランタ郊外ディケーターに住む2人の実母も悲嘆にくれている。CNNは実母のきょうだいを通してコメントを求めたが、返答は得られなかった。

一家の写真を手にするラヒム・ブラウナーさん=5月10日、ジョージア州/Lynsey Weatherspoon/Redux for CNN
遺族は殺人や犯罪を専門とする私立探偵に調査を依頼するため、3月に資金調達サイト「ゴーファンドミー」で募金を立ち上げた。
遺族が最近出した声明によれば、ナージルさんの恋人は本人が落ち込んでいる様子はなかったと話している。一緒に将来の計画を立て、結婚の話も出ていたという。カーディルさんは事業経営の夢に向かって勉強に打ち込んでいた。声明は「2人に自殺願望はなかった」と断言している。
20歳の誕生日の1カ月前に
3月28日、2人の遺体はそろいの棺(ひつぎ)でアトランタ郊外の墓地に葬られた。一緒に誕生した2人は、一緒にこの世を去った。
いとこのシャニア・ブラウナーさんによると、2人は先月に誕生日祝いとして熱帯へのクルーズを計画し、家族とのチャットで目的地をあれこれ検討していた。
遺族は2人を追悼するクルーズ旅行の企画を考えているという。

ナージルさん(左)と双子のカーディルさんを捉えた日付不詳の写真。2人はおしゃれだった/Courtesy Yasmine Brawner
本人たちが20歳の誕生日を迎えるはずだった先月5日、遺族はディケーターの実母宅に集まってお祝いの会を開いた。2人の写真を飾ったケーキや好物のチキンウィングを囲み、抱き合って涙をぬぐった。
一同は2人に「天国での誕生日おめでとう」と呼び掛け、白い風船を飛ばして天国へと高く上っていくのを見送った。