当選金119億円支払われず、女性が州の宝くじ委員会を提訴 米テキサス州
(CNN) 3カ月以上前に購入した宝くじ券の番号が当選番号と一致したにもかかわらず、当選金8350万ドル(現在のレートで約119億円)が支払われていないとして、米テキサス州の女性が州の宝くじ委員会を相手取って訴訟を起こしていることが分かった。CNNが入手した法廷文書で明らかになった。
訴訟では「テキサス州の住民なら宝くじに関して誰もが知っている通り、当選したら支払いが行われるべきだ」と説明。「当選金を受け取るために訴訟を起こす必要はない。だが、それこそまさにここで起きていることだ」と訴えた。
この女性は、モバイルアプリなどを利用してバーチャルに宝くじ券を購入できる「宝くじ宅配サービス」を通じて券を買っていた。
訴訟によると、女性は2月17日、「ジャックポケット」と呼ばれるアプリを通じて「ロトテキサス」の宝くじを購入。女性の番号は同日午後10時12分(米中部時間)に抽選で出た番号と一致していた。
当選から1週間後、当時のテキサス州宝くじ委員会トップ、ライアン・ミンデル氏は、女性が利用したような宝くじ宅配サービスを州法で禁止すると発表。禁止措置は5月19日に発効した。ミンデル氏は4月に辞任している。
訴訟では「誰もが知っているように、抽選後に宝くじ委員会がルールを変更することは許されない。だが、委員会はそれを試みている模様で、少なくとも部分的にはこの後付けの発表を根拠に、原告への当選金の支払いを拒んでいる。原告が宝くじ宅配サービスで当選券を購入したという、ただそれだけの理由で」と指摘している。
広報担当者は25日、CNNにメールで「係争中の訴訟についてはコメントしない」と説明した。
訴訟ではさらに、未払いの当選金が他の当選者への支払いに使われたり、「委員会の他の債務や目的」に振り向けられ、女性への支払い額が減額されたりする可能性があると主張している。
宝くじ宅配サービスとは?
宝くじ宅配サービスは、顧客に代わって宝くじを購入する第三者業者の役割を果たす。実店舗を通じた実物の宝くじ券の購入を調整し、当選すれば購入者に通知する。実店舗はサービス自らが所有していることが多い。
宅配サービスは通常オンラインやアプリで運営されており、使い勝手がいい。「メガミリオンズ」や「パワーボール」といった全米規模の宝くじに対応している宅配サービスもある。
テキサス州では2019年から宅配サービスが運営されていた。CNN提携局WFAAによれば、23年4月、ある業者が宅配サービスを利用して72時間以内に2500万枚の宝くじを購入したことで注目を集めた。
州知事事務所の当時の説明によれば、この業者は「ほぼ全てのあり得る数字の組み合わせ」を購入。WFAAによれば、当選金が高額だったため購入額を倍増させ、当選者は税引き前で5780万ドルを獲得したという。
24年に公表されたフロリダ州当局の報告書によれば、宅配サービスは全米19州で運営されている。
テキサス州下院の24年の報告書によると、宅配サービス業界を規制している州はニューヨーク、ニュージャージー、アーカンソーの3州のみ。テキサス州ではそうした規制がなく、運営に当たって州宝くじ委員会の許認可が不要な状態になっていた。
ホーリークロス大学のビクター・マセソン教授(経済学)によると、宅配サービスを通じた宝くじの購入は顧客にとって二つの利点がある。
マセソン氏は今年2月、「買い手は通常の売り場に行く必要がなく、手軽に宝くじを購入できる。また、州外の購入者が全米各地のあらゆる宝くじを購入できる可能性もある」との見方を示した。
一方で、手数料や適法性の問題、購入枚数に上限がない、といった欠点もあると、マセソン氏は指摘する。他の法的な懸念としては、州をまたいだ販売の規制や未成年者への販売、チケット購入シンジケートの存在などがある。