コロナの99%は「完全に無害」 トランプ氏発言の誤り、FDA長官も訂正せず
(CNN) 米国のトランプ大統領は4日、新型コロナウイルスについて、99%の症例は「完全に無害」という不正確な発言を行った。翌5日、公衆衛生の専門家である米食品医薬品局(FDA)のトップがこの発言を訂正しなかったことは、国民の安全と健康を守るという政府の中核的な責務が果たされていない現実を見せつけた。
新型コロナの99%が「完全に無害」だとする誤った発言は、トランプ大統領が4日にホワイトハウスで行った独立記念日の演説の中に盛り込まれた。これまでに米国で12万9000人以上の命を奪った新型コロナの壊滅的な影響を矮小(わいしょう)化し、国民に対してリスクを無視するよう促すかのような発言だった。
CNNは5日午前の番組で、FDAのハーン長官に対して大統領のこの発言に関する説明を求めた。ホワイトハウスの新型コロナ対策チームのメンバーでもあるハーン長官は、「誰が正しくて誰が間違っているという問題には踏み込まない」と断ったうえで、「これが深刻な問題であることは、データが示している。国民は深刻に受け止める必要がある」と語った。
一方でハーン長官は、誤解を招きかねないトランプ大統領の発言内容について直接的にコメントすることは避けた。これは、米国民と政権との間に存在する信頼の溝が拡大していることを物語る。ハーン長官は、大統領の発言を訂正することを恐れている様子だった。このパターンはこれまで政権内部で幾度となく繰り返され、トランプ大統領と意見が食い違ったり見解を否定したりした幹部の多くが辞任した。
米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が米国の登録有権者を対象に先月実施した調査によれば、新型コロナウイルスに関する正確な情報の提供についてトランプ大統領を信頼できると答えた有権者は26%のみだった。一方、米疾病対策センター(CDC)については約77%が信頼できると回答した。
ハーン長官は国民に対し、CDCと公衆衛生専門家のガイドラインに従うよう呼びかけ、もし従わなければ、自分自身や大切な人を危険にさらすことになると訴えた。しかし一方で、トランプ大統領の99%発言の誤りを裏付ける統計には踏み込まなかった。
ジョンズ・ホプキンス大学によると、大統領が演説を行った4日の時点で、米国の新型コロナウイルスによる死亡率は4.6%だった。CDCの推計によれば、3分の1の症例は無症状だが、症状がない人や軽度の人でもウイルスを他人に感染させることがあり、危険性に変わりはない。
しかも、世界保健機関(WHO)によれば、新型コロナウイルスと診断された患者の20%は症状が重く、酸素や病院での治療を必要とする。米国ではロサンゼルスやヒューストンといった都市や、テキサス、アリゾナ、フロリダなどの各州で症例が急増して病院がいっぱいになっており、集中治療室(ICU)の病床数に関する懸念が再び強まっている。
スコット・ゴットリーブ前FDA長官はCBSの番組の中で、「我々は今、第2波の中にいるという現実を受け入れる必要がある」「我々がこれをどう封じ込めるかについて、はっきりとした見通しはない」と語った。