AIで通話を同時通訳、詐欺防止も 外観は新デザイン採用 米アップル発表会
ニューヨーク(CNN) 米アップルは9日、カリフォルニア州クパティーノの本社で始まった年次開発者会議(WWDC)で、人工知能(AI)を主力の全製品に搭載して電話の同時通訳や検索機能の向上に活用する計画を発表した。
今回の発表会は、複合現実(MR)ヘッドセットの「Apple Vision Pro(アップル・ビジョン・プロ)」や同社独自AIの「アップルインテリジェンス」を披露した過去2年と比べると、華々しさに欠ける印象だった。それでもAI競争で競合他社に後れを取る中、アップルがAIを製品にどう組み込むのかは鮮明になった。
この日の発表では、スマートウォッチの「Apple Watch」でAIを活用して個々のユーザーに合わせたワークアウトを支援する「Workout Buddy」や、スマートフォンの画面に表示された画像(例えばインスタグラムに投稿された靴の写真など)をネットで検索できる「ビジュアル検索」などの新機能が披露された。
ただ、アップルがAI競争で競合他社に後れを取っているという印象は変わらなかった。この日発表されたような機能は、グーグルの「アンドロイド」搭載スマートフォンやサムスン電子のスマートフォンにはかなり前から搭載されている。
メッセージやビデオ通話の「フェイスタイム」、電話の通話で言葉の違う相手と話す際、内容をAIで同時通訳する機能は、iPhone(アイフォーン)とMac(マック)、Apple Watch、iPad(アイパッド)に搭載され、ワイヤレスヘッドフォンの「AirPods(エアポッズ)」でも利用できる。
メッセージアプリや電話アプリでは、知らない番号からの着信について、詐欺や勧誘電話かどうかを見極める機能が向上する。知らない番号から電話がかかってくると自動的に応答し、相手の名前と電話をかけてきた理由を確認した上で、着信音を鳴らす際に文字で表示する。
メッセージアプリでは、知らない相手からのメッセージが別のフォルダに表示されるようになり、詐欺かどうかをユーザーが見分けやすくなる。
電話を待つ間にあのうっとうしい音楽を聴かされずに済むよう、電話アプリがユーザーに代わって待機してくれる機能も登場する。この機能はアンドロイドには既に搭載されている。
一方、音声アシスタント「Siri(シリ)」のAI対応については、ソフトウェアエンジニアリング担当のクレイグ・フェデリギ上級副社長が「Siriを一層パーソナルにする機能については実現に向けた取り組みを続けている」と述べるにとどめ、「我々の高い品質基準に到達するためにはまだ時間が必要だ。来るべき年に詳細を共有できることを楽しみにしている」とした。

新たなユーザーインターフェース「リキッドグラス」はアップル製品全体で採用される/alliance/dpa/AP
アップル製品の外観は全て、Vision Proの半透明のソフトウェアディスプレーに着想を得た新デザイン「Liquid Glass(リキッドグラス)」を採用する。ヒューマンインタフェースデザイン担当のアラン・ダイ副社長はこれについて、2013年に「iOS7」を発表して以来、最大のソフトウェアデザイン刷新と位置付けた。
OSの名称は、例えばiOS17からiOS18になるなど毎年一つずつ繰り上がるのが通例だったが、この日発表された最新バージョンは一挙に「OS26」へと切り替わった。
この新名称は、ユーザーがそのバージョンを使用する年に合わせている。9日に発表されたバージョンが使われるのは25年から26年。これでアップルの全OSについて、これまで製品によってバラバラだったバージョン番号(例えばmacOS15、watchOS11など)が統一される。