つらく危険な酷暑、老化を加速させる可能性 その仕組みは?
対策として何ができるのか?
エルシャー氏は一連の研究結果について、暑い地域に暮らす人が全員、老化の加速を経験することを意味するものではないと説明する。人それぞれにリスク要因があり、適応する方法はある。
涼しい場所を利用して、日中の最も暑い時間帯の運動は避けることが重要だ。栄養状態の改善や(日中の涼しい時間帯における)運動量の増加に加え、薬の服用も役立つ可能性があるという。科学者の間では、糖尿病治療薬メトホルミンや減量薬オゼンピックなどの薬が老化を遅らせる可能性があることが分かっている。
熱にさらされるレベルを変えるか、適応する方法を見つけることができれば、生物学的老化の加速を遅らせたり、逆転させたりできるかもしれない、とエルシャー氏。「なぜなら、生物学的年齢は永久的な損傷ではなく、永久的な損傷の可能性を示す指標だから。必ずしも既に損傷が生じたことを意味するわけではない」
この研究分野はまだ新しく、豪モナッシュ大学公衆衛生・予防医学部の研究員、ロンビン・シュー氏は 「特に人間に関しては、このプロセスの理解は始まったばかりだ」と指摘する。
ただ、各地の気温が上昇して猛暑記録が更新されるにつれ、暑さが体に及ぼす様々な影響や、最も影響を受けやすい層について得られるデータは今後大きく増えるだろう。
「気温上昇に対してなす術(すべ)がないのであれば、少なくとも認識を高め、対策を探る必要がある」とエルシャー氏は指摘し、「この状況を乗り越える方法があるはず」と話している。