ネアンデルタール人の食生活、ウジ虫三昧だった? 新たな研究が示唆

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ネアンデルタール人の骨に残る顕著な化学的特徴は、ウジ虫食で説明が付く可能性がある/Science Photo Library/Alamy Stock Photo

ネアンデルタール人の骨に残る顕著な化学的特徴は、ウジ虫食で説明が付く可能性がある/Science Photo Library/Alamy Stock Photo

(CNN) ネアンデルタール人は肉に目がなく、狩りで捕らえたマンモスをステーキにしては、火を囲みながら皆で食べた。石器時代を研究する多くの考古学者は、かつてそう考えていた。

しかし研究の量が増えるにつれ、実際のところ新鮮な肉は唯一のメニューなどでは全くなく、ネアンデルタール人は豆類や甲殻類を含む多様な食物を食べていたことが分かってきた。

それでもネアンデルタール人の骨に残る化学的特徴は、依然として強力な肉食の傾向を示唆する。そうした特徴がライオンやオオカミをも上回る水準で表れることは、数十年にわたって研究者たちにとっての謎となっている。そして今、新たな研究から石器時代に食べられていた可能性のある意外な食材が明らかになった。

25日付の科学誌サイエンス・アドバンシーズに掲載された論文によると、腐敗した動物の組織から生まれ、それを餌に成長するハエの幼体、つまりウジ虫もまた、先史時代の主食だったことが示唆されるという。

論文の筆頭著者で米インディアナ州パデュー大学助教(生物人類学)のメラニー・ビーズリー氏は、ホモサピエンスやネアンダルタール人など先史時代の人類の骨から検出される際立った化学的特徴について、ウジ虫を食べていたとすればそれらが説明できることを突き止めた。ネアンデルタール人は今から4万年前に絶滅した。

ビーズリー氏の発見は、論文共著者で米ミシガン大学の人類学者、ジョン・スペス氏の立てた仮説を裏付けるものだ。スペス氏は10年近くにわたり、腐敗した肉や魚が先史時代の食生活の主要な部分を形成していたと主張している。同氏の研究は先住民族のグループの食生活に関する民族誌的な説明に基づく。

過去の食生活について理解するため、研究者らは窒素や炭素といった元素の様々な同位体に由来する化学的兆候を調べる。そうした元素は歯や骨の中に何千年にもわたって保存される。

研究者らはまず、1990年代に北欧で発掘されたネアンデルタール人の骨の化石から、窒素の同位体の一つである窒素15を特に高い水準で検出した。この化学的特徴により、彼らの肉の消費量はライオンやオオカミに匹敵することが示唆された。

スペス氏の研究では、腐敗した肉の方が新鮮な肉よりも窒素の濃度が高くなる可能性があることに着目。ネアンデルタール人の骨から検出される窒素レベルの高さはこの点に原因があるのではないかとみている。

ビーズリー氏も人体の分解過程に関する研究から、腐敗する肉における窒素レベルを分析。人間の組織での窒素レベルは時間をかけても控え目にしか増えないが、ウジ虫に含まれる窒素レベルは格段に高いことを確認した。これはネアンデルタール人や初期人類がウジ虫の混ざった動物肉を日常的に食べていた公算が大きいことを示唆する。

ビーズリー氏によると、ウジ虫に含まれる窒素レベルは現代の法科学でも遺体の死亡時期を割り出す際の参考にされているという。

英スコットランドのグラスゴー大学で先史考古学を研究するカレン・ハーディー教授は、ネアンデルタール人がウジ虫を食べていたとの見方には説得力があるとしつつ、ウジ虫の痕跡が考古学的記録に残らないため、決定的に証明される公算は小さいと指摘した。同氏は今回の研究に関与していない。

国連食糧農業機関によれば、現在世界では少なくとも20億人が昆虫を伝統的な食材として食べていると推計される。

研究では歴史的記述を引用する形で、イヌイットなど多くの先住民族にも言及。これらの先住民族は、腐敗してウジ虫のわいた動物肉を食材として非常に好み、窮乏をしのぐ目的で配られるような食料とはみなしていなかったという。

一方ビーズリー氏は、現代の遺体を扱った自身の研究について、予備的なものであり、複数の制約があると注意を促した。

具体的に言うと当該の研究の対象は少数の検体に限られており、人間の筋肉組織に焦点を当てている。ネアンデルタール人に狩られた可能性のある動物の組織や臓器には着目していない。さらに遺体に発生したウジ虫は三つの異なる科に属しているが、これらは約1万1000年前に終わった後期更新世に生息していたウジ虫と同じものではない可能性がある。

この他研究では、石器時代の肉の保存に影響を与えたであろう気候や気温の多種多様なパターンは考慮に入れていない。

ビーズリー氏は現在アラスカ州の研究者と連絡を取り、先住民族による伝統的な食材の準備法を共有したいと考えている。それらの手法が窒素レベルにどのような影響を与えるのか、その知見を深めるのが目的だ。

蘭ライデン大学のヴィル・ルーブルーク名誉教授(旧石器時代考古学)は、今回の研究について、石器時代の狩猟採集者がどのような食生活を送っていたのかを探る上で、非常に興味深い切り口を提示したと評価。「ネアンデルタール人及び後期更新世の人類の食生活に関して新鮮な(新鮮というのがこの場合にふさわしい言い回しだとして)展望を与えることは確実」と語った。同氏は今回の研究に関与していない。

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