アイスペースの月着陸船、まもなく月面着陸へ 成功すれば米国企業以外で初
(CNN) 日本の宇宙企業ispace(アイスペース)の月着陸船「レジリエンス」が米東部標準時5日午後3時24分、2度目の月面着陸に挑む。
レジリエンスが着陸に成功すれば、米国企業以外で初の偉業となる。民間企業による月面着陸は、今年3月に米宇宙企業ファイアフライ・エアロスペースの「ブルーゴースト」も成功させていた。
同社は「初」という輝かしい記録を逃したことについてそれほど懸念していない。同社幹部は、月への道のりをゆっくりと着実に歩むことで、長期的なメリットを得られると述べる。
最高財務責任者(CFO)の野崎順平氏は1月、CNNの取材に対し、当時の4~5カ月間で良いことは、日々、予想もしていなかった小さな出来事が起こることだといい、月への旅はまさに学習段階だと語った。
従業員で構成する3チームは東京にある同社のミッションコントロールルームに交代で入り、予測不可能で大胆な深宇宙旅行の物理的状況を監督するための訓練を数カ月にわたり重ねてきた。同社の創業者で最高経営責任者(CEO)の袴田武史氏はCNNに、こうした経験について貴重な機会だと語った。
ただし、月へ徐々に近づいていくというこのアプローチが着陸の成功を保証するわけではない。
アイスペースが初めて月面への着陸を試みたのは2023年4月。地球から4カ月半の旅の後、墜落し失敗に終わった。

上部にあるのがレジリエンスで運ばれる探査車「テネシアス」。アイスペースが開発した=2024年10月、JAXA筑波宇宙センター/Toru Hanai/Bloomberg/Getty Images
数カ月、数週間、数日で月に到達
レジリエンスは「低エネルギー遷移」と呼ばれる軌道をたどる。これは基本的に低速での巡航ルートだ。自転車で下り坂を下るようなもので、燃料やエネルギーをほとんど消費しない。
レジリエンスは、この軌道を数十万キロも飛行し、深宇宙へと舞い上がり、月の重力によって自然に月周回軌道に乗るのを待つ。
一方、ファイアフライのブルーゴーストや、テキサス州に拠点を置くインテュイティブ・マシーンズの月着陸船「Nova―C」などは大型エンジンを搭載し、より直線的な軌道を進み、自力で月に到達している。Nova―Cは打ち上げから約1週間で月に到達した。
競合他社の月着陸船と比較すると、レジリエンスは小型のロケットエンジンを搭載しており、軽量で比較的安価だ。
しかし、欠点もある。
野崎氏は、レジリエンスの3回目のミッションをもって、その成果にかかわらず、低エネルギー輸送方式をやめると述べた。
同社はマサチューセッツ州に拠点を置くドレイパー研究所と提携し、アルテミス計画の一環である商業月面輸送サービス(CLPS)の下で次期月着陸船「APEX1.0」を打ち上げる予定で、より直接的に月へ向かうことを目指している。
野崎氏は、月への迅速な到達は顧客にとって非常に重要だと述べている。
これらの顧客には、着陸船に科学機器などの貨物を積載するため同社に費用を支払う研究グループや企業、政府などが含まれる。
同社によると、数カ月に及ぶ輸送は、月面での運用開始前に宇宙空間の強烈な放射線環境や激しい温度変化にさらされるため機器の消耗を加速させかねない。
23年4月に月面着陸に初めて挑んだ際は、月の表側の北東にあるアトラス・クレーターに向かって降下中に墜落した。今回は月の極北に位置する、全長1200キロの「氷の海」に降り立つ予定だ。
同社は5日(日本時間6日)の着陸の様子をユーチューブとX(旧ツイッター)でライブ配信するとしている。
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原文タイトル:Spacecraft set for a high-stakes lunar landing attempt this week took months to reach the moon. Here’s why(抄訳)