コアラ激減させるクラミジア 気候変動で状況はさらに悪化

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
コアラの激減の要因として、クラミジアの感染による死亡や不妊が挙げられるという/Lisa Maree Williams/Getty Images

コアラの激減の要因として、クラミジアの感染による死亡や不妊が挙げられるという/Lisa Maree Williams/Getty Images

(CNN) オーストラリアに生息するコアラの間でサイレントキラー(静かな殺し屋)が広がっており、野生生物の専門家らは、このままいけば同国の大部分でコアラが絶滅しかねないと警鐘を鳴らす。

その犯人はクラミジアだ。クラミジアは性行為によって感染する性病の一種で、全世界で毎年1億人以上が感染している。治療せずに放置すると不妊の原因にもなる。

コアラの場合も、クラミジアを制御できないと失明したり、生殖器官に痛みを伴う嚢胞(のうほう)ができたりして、不妊や死を招く恐れもある。

さらに悪いことに、クラミジアの治療に使用される抗生物質は、コアラが主食であるユーカリの葉を消化吸収するのに必要な繊細な腸内フローラ(腸内細菌)を破壊してしまうため、中にはクラミジアが治っても餌が食べられずに餓死してしまうコアラもいる。

またクラミジアは、感染拡大のスピードも速い。

シドニー大学の獣医病理学教授マーク・クロッケンバーガー氏によると、ニューサウスウェールズ州北東部の田舎町ガネダーに生息するコアラのクラミジア罹患(りかん)率は、2008年は約10%と極めて低かったが、15年までに60%まで増加し、現在は約85%にも達しているという。

「そう考えると、もはやコアラは不妊が原因で個体数を維持できなくなっている。クラミジアに感染したほぼ全てのメスが、1年か遅くとも2年以内に生殖能力を失う(中略)仮に生き残ったとしても子は産めない」とクロッケンバーガー氏は言う。

コアラのクラミジア感染症の罹患率は、ガネダーだけでなくオーストラリア全土で急上昇しており、激化する森林火災や、森林破壊による生息地の喪失といった問題にすでに直面しているコアラにとってさらなる脅威となっている、と専門家らは指摘する。

コアラをクラミジアから守るため、科学者らは現在、クラミジアに対するワクチンを試しているが、「このワクチン戦略がうまくいかない場合、局所的にコアラが絶滅する可能性が極めて高い」とクロッケンバーガー氏は懸念を示す。

オーストラリアのコアラは絶滅の危機に瀕しているのか

オーストラリアのコアラは多くの脅威にさらされている。病気以外にも生息地が失われたり、野生の犬に襲われたり、車にはねられることもある。

コアラは、絶滅の危機にある世界の野生生物をリストアップした国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「危急」に分類されている。

19年にオーストラリアで発生し、ニューサウスウェールズ州だけで4万8000平方キロの森林が焼失した壊滅的な森林火災により、コアラの個体数が激減した。

2019年の森林火災でやけどを負い、ポートマッコーリーのコアラ病院で回復したコアラのポール/Nathan Edwards/Getty Images
2019年の森林火災でやけどを負い、ポートマッコーリーのコアラ病院で回復したコアラのポール/Nathan Edwards/Getty Images

世界自然保護基金(WWF)によると、この火災で死亡した、あるいは住む場所を失った動物は約30億匹に上るという。その中には、死亡や生息地の喪失、あるいは炎による負傷、心的外傷、煙の吸入、熱ストレスなどの被害を受けた6万匹以上のコアラも含まれている。

オーストラリア政府は、21年半ばに発表したコアラの保護状況に関する報告書の中で、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、首都特別地域(ACT)でコアラの個体数が激減しているとし、これらの州・地域に生息するコアラの地位を「危機」に変更するよう勧告した。同報告書によると、一部の地域ではコアラの数がわずか20年間でほぼ半減したという。

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]