コアラ激減させるクラミジア 気候変動で状況はさらに悪化

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2019年に発生した森林火災は、コアラの生息域に甚大な被害をもたらした/CCTV

2019年に発生した森林火災は、コアラの生息域に甚大な被害をもたらした/CCTV

クラミジアはどのように広がるのか

コアラの生息地や食料に対する脅威に比べれば、クラミジアは二次的な問題に思えるかもしれない。しかし、コアラの個体数が減少する中、生殖の重要性はこれまで以上に高まっていると専門家らは指摘する。

オーストラリアのコアラが感染するクラミジアは2種類存在するが、コアラのクラミジア感染症の最も深刻な症例は、ほぼクラミジア・ペコラムが原因と言って差し支えない。

20年9月に学術誌「FEMSマイクロバイオロジー・レビューズ」に掲載されたある論文によると、より危険度の高いこのクラミジア株は、19世紀に欧州からの入植者たちによってオーストラリアに持ち込まれた家畜が発生源である可能性があるという。

コアラのクラミジア感染症は、交配に関連する繁殖行動や社会行動を通じて広がるが、子どもは母親から感染する。

シドニー大学によると、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州に生息する一部の個体群のクラミジア感染率は100%で、完全に生殖力を失っているという。

また18年3月に英国の学術誌「ジャーナル・オブ・アプライド・エコロジー」に掲載された研究論文によると、4年にわたって調査した291匹のコアラのうち18%がクラミジアや、クラミジアに伴う合併症で死亡したという。

この調査では、病気が他の動物からの攻撃に次いで2番目に高い死因だった。

ドライバーにコアラが現れることを警告する道路標識/David Gray/Bloomberg/Getty Images
ドライバーにコアラが現れることを警告する道路標識/David Gray/Bloomberg/Getty Images

気候変動で問題がさらに悪化

オーストラリアでは、気候危機の影響で壊滅的な森林火災や干ばつ、熱波が発生しやすくなっている。また気候危機が原因で、コアラも病気にかかりやすくなっている。

オーストラリア政府の報告書によると、コアラが「暑い天気、干ばつ、生息地の喪失・分断」といった非常にストレスの多い環境条件にさらされると、コアラの個体群の間でクラミジア感染症が広がる速度が増すという。

クロッケンバーガー氏がガネダーで調査していたコアラの個体群でも、09年と10年に熱波と干ばつが相次いで発生した後にクラミジアの症例が倍増したという。

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