米労働者の大部分がスケジュールで苦労、雇用主が気にすべき理由とは
(CNN) アリシア・コステロさんは米バージニア州の大型店で販売員として7年間勤務していたが、週ごとのスケジュールはばらばらで、有給休暇を申請するのも面倒だった。
コステロさんはしばらくの間はなんとかやっていけていた。しかし、第1子を妊娠。医師の診察は少なくとも1カ月前には予約しなければならないのだが、承認される保証はなかった。
「一生懸命働いてせっかくためた時間が限られ、その時間をいつ使えるのか、使えないのかわからないのは本当にイライラする。肉体的にも精神的にも負担には限界がある」(コステロさん)
コステロさんは家族と過ごす時間を増やすため仕事を辞めたが、コステロさんの経験は米国の労働者の大多数に共通したものだ。調査会社ギャラップが発表した全米調査によれば、米国の労働者のほぼ3分の2が、不安定で柔軟性のない勤務スケジュールに苦労している。
一方、1万8000人の従業員を対象とした調査によれば、予測可能なスケジュールの労働者は経済的な安定やワーク・ライフ・バランスの改善、仕事に対する全体的な満足度の向上を享受している。
「今、人々が抱いている最大の疑問の一つは、失業率がかなり低いにもかかわらず、なぜ何百万人もの労働者が依然としてこれほどの幻滅や無関心を感じて生活に苦しんでいるのかということだ」。今回の調査を共同で行ったファミリー・アンド・ワーカーズ・ファンドのエグゼクティブディレクター、レイチェル・コルバーグ氏はそう語る。
「雇用の量だけを問う議論から、雇用の質についても問う議論へと移行する必要がある」(コルバーグ氏)
最も注目すべきなのは、調査対象者の41%が労働時間や労働日、休暇の取得時期について、ほとんどあるいは全くコントロールできないと回答したことだ。
加えて、労働者の4分の1以上が2週間以上先の予定が分からないと答えている。
「ここで強調すべき重要な点は、誰もが月曜日から金曜日まで常に同じ時間で午前9時から午後5時までの勤務を望んでいるということではない。労働者が自身のスケジュールについて発言できるということだ」(コルバーグ氏)
調査によれば、予測ができない勤務スケジュールは頻繁なスケジュールの変更やシフトのキャンセルを伴うことが多く、人生の節目のイベントの計画や副業の維持を困難にしている。このため、質の低い勤務スケジュールで働く人の約38%が経済的な困難に直面していると報告している。
多くの雇用主は残業代が必要ないように週の勤務時間を40時間未満に削減するかもしれない。コルバーグ氏は、小さな調整ではあるが低賃金の労働者には大きな影響を及ぼす可能性があると指摘する。
コステロさんの場合、週の労働時間は39時間と決められていた。「残業は一切認められなかった。特に休暇の準備として、お金をためて、そこここで残業できたらよかったのに、ほんとうにつらかった」
調査によれば、年齢や性別、学歴、業界を考慮しても、勤務スケジュールの変動はパートタイム労働者と大学卒業資格のない労働者に特に多くみられることがわかった。
ペンシルベニア大学のガイ・デービッド教授によれば、こうした従業員は代替可能であり、職場に対する発言権も少ないとの考え方があるという。
デービッド氏は医療従事者の労働条件に関する独自調査から、不安定な勤務スケジュールの人は退職する可能性が高いことを発見した。だが、多くの雇用主は、従業員にとって、ワーク・ライフ・バランスがどれほど重要なのかを認識していない可能性があるという。
「この調査結果は我々の調査結果を裏付けるものであり、給与を増やすことなく従業員の定着率を高めたいと考えている企業にとって警鐘となる。特に若い世代は明確な境界線を求めている」(デービッド氏)
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)もこうした意識の変化の主要因となった可能性がある。在宅勤務に移行する企業が増えるにつれて、労働者はより柔軟な働き方に慣れていった。
自動のスケジュール管理システムはすでにさまざまな業界で広く使われているが、将来的には労働者の需要を研究してそれを企業の要求と両立させる人工知能(AI)主導のシステムを導入する企業が増える可能性がある。デービッド氏はそうした見通しを示した。