多様性促すDEI政策、株主からは支持 その理由は

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小売り大手コストコの店舗=米カリフォルニア州リッチモンド/Justin Sullivan/Getty Images

小売り大手コストコの店舗=米カリフォルニア州リッチモンド/Justin Sullivan/Getty Images

ニューヨーク(CNN) DEI(多様性・公平性・包摂性)は米国の実業界で逆風にさらされているが、唯一の例外がある。実際に企業を保有している株主だ。

今年、コストコやアップル、リーバイス、ジョンディア、ゴールドマン・サックスなど米国を代表する企業で、株主はDEIを標的とする議案を圧倒的多数で否決した。議案は、企業にDEI方針の全面撤廃や経営陣の報酬から多様性目標を外すこと、DEI推進に伴う法的リスクの監査を求めるといった内容だった。提出したのは保守系シンクタンクの全米公共政策研究センター(NCPPR)と全米法律政策センター(NLPC)が中心だ。

ほぼ満場一致の否決は二つの事実を物語る。第一に大小の投資家は、経営陣が「アクティビスト(物言う株主)」の意向に振り回されることを望んでいないこと。第二に、株主はDEIプログラムを維持することがビジネス上有益だと考えているということだ。

ラトガース大学のマッテオ・ガッティ教授(法学)は反DEIの提案が否決されたことについて、「投資家は、DEIに強硬な姿勢を取ることが財務的に意味があるとは考えていないことを示している。イデオロギー的な株主に経営を委ねたくないという意思表示だ」と指摘する。

割引セールを行っているリーバイスの店舗=2021年12月、米フロリダ州/Jeffrey Greenberg/UCG/Universal Images Group/Getty Images
割引セールを行っているリーバイスの店舗=2021年12月、米フロリダ州/Jeffrey Greenberg/UCG/Universal Images Group/Getty Images

職場におけるDEIは一般に、社員研修やネットワーク、採用慣行などの組み合わせだ。これらを通じて、人種や性別、階層、障害の有無、軍務の経験者など多様な層の代表性を拡大することを目指す。一方、テスラとSNS「X」の最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏は、DEIを「逆差別」と批判している。

ターゲットからメタまで、多くの企業がここ数カ月、トランプ政権や右派活動家、保守系法律団体などからの圧力で多様性プログラムを縮小・見直してきた。しかし株主総会の場では、反DEI派は珍しく敗北を重ねている。

背景には、大手機関投資家の存在がある。ブラックロックやバンガードなどは多くの企業で筆頭株主だ。こうした機関投資家はおおむね会社側の提案に賛成し、株主提案の約90%に反対票を投じる傾向がある。

別の狙い

保守系団体にとって、株主提案は勝敗だけが目的ではない。

ラトガース大学のガッティ教授によれば、反DEIの決議はアクティビストにとって、メディアの注目を集め、財政的・政治的な支援を募り、DEI政策に関して企業に圧力を加え続けるための安価な手段だ。

保守派の団体は、反DEIの株主提案は企業と交渉して改革を求めるうえで有用だと主張する。例えば、全米法律政策センターはペプシコが管理職における少数派の代表に関する目標を終了すると発表した後、ペプシコに対する反DEIの株主提案を撤回した。

広がらぬ支持

反DEI派は、かつてDEI推進派が用いた手法を踏襲している。

2020~21年にかけてDEI政策の改善を求める株主提案が急増したが、その後は企業の取り組み疲れや、社会問題にかかわらないよう求める圧力が強まったことで、勢いを失った。代わって反DEI提案が増加しており、今年4月1日の時点で、DEI関連提案のうち約40%が反対色を帯びる。ただしこうした提案に対する投資家からの支持率は平均2%未満と低迷している。

米ロサンゼルスにあるアップルストア/Daniel Slim/AFP/Getty Images
米ロサンゼルスにあるアップルストア/Daniel Slim/AFP/Getty Images

調査機関コンファレンス・ボードは報告書で「機関投資家や議決権行使助言会社は、こうした提案をコーポレートガバナンスの最善の実践や投資家の最優先事項に合致していないとして、一貫して反対している。提案は主流の投資家連合ではなく、ごく少数のアクティビストが提案しており、その魅力はさらに限定的になっている」と指摘した。

フォーダム大学のアティヌケ・アデディラン准教授(法学)は「DEIは終わったと喧伝(けんでん)されるが、多国籍の大株主は企業のDEI施策を支持している」と話している。

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