出社義務化、若手社員のキャリア開発の特効薬にあらず

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企業の上層部は、在宅勤務者が希望しているよりも、社員の出社日数を増やしたいと考えていることが多いという/SDI Productions/E+/Getty Images

企業の上層部は、在宅勤務者が希望しているよりも、社員の出社日数を増やしたいと考えていることが多いという/SDI Productions/E+/Getty Images

ニューヨーク(CNN) 企業の最高経営責任者(CEO)や上層部は、在宅勤務者が希望しているよりも、社員の出社日数を増やしたいと考えていることが非常に多い。

若手や新入社員のキャリア開発には対面式でより多くの経験を積むのが最適だと信じてやまない上層部は多い。

それも一理ある、ある程度は。

「新型コロナで過熱した部分がある」と言うのは、「フレックス・ストラテジー・グループ」創業者のカリ・ウィリアムズ・ヨストCEOだ。同社はフレックス勤務戦略を成功に導くアドバイスを企業や組織に提供している。

ニューヨーク連邦準備銀行とアイオワ大学、ハーバード大学の経済学者が行った最近の研究によると、在宅勤務で生産性が短期的に上がる可能性があるが、新入社員育成には大きな代償を伴う場合もあることが判明した。

「(在宅勤務で)若手社員の共同作業や研修の機会が減る。若手社員や女性社員の場合、もともと会社であまり受け入れられていないと感じているためか、他の社員との共同作業が極端に難しくなり、それに応じて離職する頻度も増える」と、専門家はまとめている。

社員の1人が在宅勤務を選択すると、他の社員との共同作業が減る可能性があることもわかった。先輩社員がリモート勤務を選択した場合、若手社員のスキル習得に支障が生じる場合もあるという。

だが、こうした研究結果はリモートワークそのものを非難しているというより、雇用主に再考を促していると言えるだろう。どうすれば社員を最適に研修できるか。より柔軟な働き方が求められる時代に共同作業を進めるにはどうすればいいか。他の研究が示唆しているように、こうした対応は社員のやる気や定着率にプラスに作用する。

「グローバル・ワークプレイス・アナリティクス」社のケイト・リスター社長は、技術革新や社員教育には出社日数を増やすのが最適だと信じて疑わない企業の重役に対して問いかける。「なぜそうだと言えるのか。以前からデータを取っていたのか」

リスター氏や職場戦略の専門家も言うように、カギは雇用主にある。雇用主は、新人の研修や指導といった面で、対面勤務にすれば自動的にメリットがもたらされると思い込むのではなく、もっと意図的に取り組まなければならない。

古き良き時代はそれほど良くもない

考えてみれば、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以前はほとんどの社員が週5日間出社していた。

だが、それでも新入社員の離職率は高かったとリスター氏は言い、根拠としてデータ主導コンサルティング会社「ワーク・インスティトゥート」の分析を挙げた。同社は社員の定着率を上げる取り組みとエンゲージメント戦略の立案サポート業務を企業向けに提供している。

同社は2010~19年、全米20万人以上の労働者を対象にして職場に関するデータを分析した。その結果38%が入社1年目で、17.5%が2年目で退職していたことが判明した。年齢別にみると、20~29歳の労働者の約25%が、仕事関連の退職理由としてキャリア開発を一番に挙げた。2位はワーク・ライフ・バランスだった。

リスター氏は、雇用主への教訓について、「社員に会社に残ってほしいなら、社内・社外の両方で社員指導に意図的に取り組むべきだ」と述べた。

万能薬はない

米経済誌フォーチュンが行ったアンケート調査によると、フォーチュン500社のCEOのうち34%が週4日以上、40%が週3日の出社を希望している。

だが、「何日出社すべきか」という問いに固執するのは間違ったやり方だとヨスト氏は言う。「しゃくし定規になんでも当てはまるとは限らない。強制しても失敗するのはそれが理由だ」

同氏が挙げたデータによると、全米主要10都市のオフィス占有率は今年2月にパンデミック以降のピークを迎えたが、その後在宅勤務率の上昇に伴って減少しているという。

一方、3月に企業向けコンサルティング会社「コーン・フェリー」が部長クラスのホワイトカラー400人以上を対象に行った非公式のオンラインアンケートによると、回答者の半数以上が雇用主から出社を要求されていると回答した。ただし、週4~5日の出社を求められているのは20%にとどまった。また大多数が、上司は社員本人よりも出社させることに関心があると回答した。

ヨスト氏も示唆しているように、上層部は出社日数について組織の各部署に判断を任せたほうがよさそうだ。判断の前に考慮しておくべき問いは、以下のようになる。

1.こなすべき仕事は何か

2.仕事をこなすには、若手社員にどんな研修や指導を行うべきか

3.いつ、どこで、どうやって研修や仕事を行うのが最適か

こうした問いに対する答えには、新人研修といった課題や、観察と学習をいかにうまく促進するかという課題がある。それと同時に、出社が最適な場合とリモートでも実現可能な事例を現実的に評価しなければならない。

「一般的に、これまで若手社員の育成には上層部の意志が欠けていた」とヨスト氏。「コロナ前もすごかったわけではない。今こそ改善するチャンスだ」

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