旧ムッソリーニ邸に一家の幽霊が出没 現在の所有者が証言

ムッソリーニ一家の幽霊が出ると言われている伊北東部の邸宅ヴィラ・カルペーナ/Marco Buonasorte Moriconi/Villa Carpena

2022.12.24 Sat posted at 21:00 JST

(CNN) イタリア北東部エミリア・ロマーニャ州にある邸宅ヴィラ・カルペーナには、イタリアのファシスト独裁者ベニート・ムッソリーニの軍服や彼が愛用していたバイク、鉄製のゆりかご、不気味な寝室の鏡などが展示されている。

第2次世界大戦中、アドルフ・ヒトラーと協力関係にあった人物にゆかりのある場所を訪れるだけでも不快感を覚えるが、この邸宅が不快な理由はそれだけではない。所有者によると、ここにはムッソリーニの幽霊がよく出没するという。

エミリア・ロマーニャ州フォルリ市内の小さな地区カルペーナにあるこの邸宅にはムッソリーニ本人とその家族の幽霊が出るとのうわさがあり、地元の人々はその証拠もあると主張する。

かつてムッソリーニ一家が田舎の静養所として使用していたこの邸宅には、彼らのさまざまな私物や美術品が山積みになっている。

今日、「思い出の詰まった家」とも呼ばれるこの黄色がかったリバティ・スタイルの邸宅には、歴史愛好家やスリルを味わいたい人々が数多く訪れている。


ヴィラ・カルペーナのダイニングルーム/Marco Buonasorte Moriconi/Villa Carpena

2000年にあるイタリア人実業家がこの邸宅を購入して以来、オーナーだけではなく、招待されたゲストたちも激しい超常現象や超自然現象を体験したと主張。その一部は「ゴーストバスターズ」を自称するある調査チームも目撃し、録画・録音も行ったという。

鏡に浮かぶ顔

「ここにはムッソリーニ一家がいて大変にぎやかだ。彼らはまだ全員ここにいる。彼らの存在を感じるし、彼らは常に我々を監視している」と語るのは、ヴィラ・カルペーナの現在の所有者であるドメニコ・モロジーニ氏だ。モロジーニ氏は、妻のアデルさんとこのヴィラを運営している。

「彼らの敬意を感じるので恐怖心はないが、霊たちを刺激したくないので、夜間はヴィラに入らないことにしている」(モロジーニ氏)

現在、モロジーニ夫妻は、ヴィラ・カルペーナの敷地内に新たに建てた建物に住んでいる。夫妻は何年も前から、かつてムッソリーニ家が所有していたオリジナルの品を追跡・回収し、それらをヴィラの設備として利用してきた。

ムッソリーニは1922年から43年までイタリア王国の首相を務め、独裁制を敷いたが、第2次世界大戦でのイタリアの敗戦により失脚し、逮捕された。近年、イタリアではムッソリーニへの関心が高まっている。ファシストであるムッソリーニが残した負の遺産を非難し続けている人は多いが、今でも彼は良くも悪くも心を引き付けられる人物であることに変わりはない。

モロジーニ氏は、米国のオークションで購入したムッソリーニの制服をヴィラ・カルペーナに持ち帰り、ムッソリーニが妻ラケーレと寝ていたベッドの上に広げたという。

「その日いっしょにいた霊媒師が、気分が悪くなって座り込み、『彼(ムッソリーニ)がここにいる』とささやいた。その直後に、ムッソリーニの顔の暗い影が寝室の化粧台の鏡に現れ、それ以来、まるで鏡のガラスにプリントされているかのようにそこに残っている。単なる光の反射とは思えない」とモロジーニ氏は付け加えた。

ヴィラのガイド付きツアーに参加する旅行者も、このぼやけたムッソリーニの顔を見ることができる。

モロジーニ氏は、他にもいくつかの不気味な現象を目撃したという。「昼間にヴィラの中で強風の音がしたり、廊下を歩く足音を聞いたことがある」


ムッソリーニの子どもの1人が使っていたベッドルーム/Marco Buonasorte Moriconi/Villa Carpena

ムッソリーニの妻ラケーレと子どもたちの何人かは、戦後、イスキア島での避難生活から戻った後、何十年間もそのヴィラで過ごした。

モロジーニ氏は「過去の記念品」が大好きで、ヴィラ・カルペーナもムッソリーニの息子の1人から買い取り、アンティークの家具や装飾で大規模な改装を行ったという。

ゴーストバスターズと神経質な幽霊たち

ヴィラ・カルペーナで奇妙な出来事が起こり始めたのはヴィラを購入した後だとモロジーニ氏は明かす。ヴィラに幽霊が出るといううわさが急速に広まり、超常現象が専門のプロたちの好奇心をそそった。

2013年には、多くのゴーストバスターズがヴィラを訪れた。伝えられるところによると、彼らはヴィラに1泊し、暗闇の中で起きた不気味な出来事を録音したと主張しているという。

「我々は女性のか細い声らしき音をテープに録音した。それを再生すると、ヴィラの古くからの管理人は恐怖のあまり座っていた椅子から飛び上がり、これはラケーレの声だとささやいた」と語るのは、イタリアの超常現象調査隊ゴースト・ハンター・パドヴァのアンドレア・プリエーゼ氏だ。

飛行機の音も録音されていた。この音は、元パイロットで1941年の飛行機墜落事故で早世したムッソリーニの息子ブルーノに関係している可能性が高いとプリエーゼ氏は指摘する。

またその夜、複数の熱画像も撮影され、ムッソリーニが愛用していたバイクのハンドルバーと燃料タンク上に(熱を帯びていることを示す)いくつかの赤い部分が見られたという。プリエーゼ氏は、ムッソリーニの幽霊が懐かしさのあまり思わずバイクに触れてしまった証拠の可能性もあるとしている。

「特に驚く出来事が起きたのは、かつてムッソリーニ一家が食事をしていたダイニングテーブルにトーチランプを置いた時だ。我々が(ムッソリーニの家族の幽霊たちに)そこにいる証拠を示すよう求めたところ、突然ランプが点いたり消えたりした」(プリエーゼ氏)


ムッソリーニの顔の影が現れたとヴィラの所有者が主張する鏡/Andrea Pugliese/Ghost Hunter Padova

ゴーストハンターのチームがヴィラに到着し、機器を組み立て始めると、プリエーゼ氏は自分たちが歓迎されていないような敵対的な雰囲気を感じたが、夕方には雰囲気が変わり、緊張は和らいだという。

プリエーゼ氏が語りたいのは「幽霊」についてではなく、むしろ「異常な現象」や「存在」の方だ。それらが今も取りつくその家は、ムッソリーニ一家が幸せな時を過ごし、手放したくないと考えている場所だ。

「彼らは(幸せだった)過去に縛られているだけで、決して恐ろしい話ではない。また妻のラケーレ自身も謎めいた女性で、交霊会を開催したり、自宅に悪魔払いのための塩つぼがあったのは周知の事実だ」とプリエーゼ氏は言う。

モロジーニ氏は、ゴーストバスターズをヴィラに招き入れた後、1年間気分が優れなかったと打ち明けた。ムッソリーニ一家の霊たちは、他人がヴィラに立ち入ることに不満を抱いていたのではないかと気付いたのはそれからずっと後だったという。

しかし、イタリアでムッソリーニの幽霊が出るとうわさされている場所はヴィラ・カルペーナだけではない。

ローマとファシズム時代に設立された都市ラティーナを結ぶアッピア旧街道でも、地元の人々の主張によるとムッソリーニの幽霊がグッツィの赤いバイクに乗ってしばしば駆け抜けていくという。ゴーグルと革の帽子を身に着けた姿で、夜に恋人に会いに行く途中だと言われている。

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