北極圏の海氷、「最後の砦」が観測史上初の崩壊 グリーンランド沖

グリーンランド北部沖の厚い海氷までも、気候変動の影響で崩壊しているという/Mario Tama/Getty Images

2018.08.24 Fri posted at 12:58 JST

(CNN) 北極圏の中でも特に厚い海氷が堆積(たいせき)するグリーンランド北部沖。海氷の高さは20メートルを超す場所もある。気候変動の影響で海氷が急速な縮小を続ける中で、この一帯は年間を通じて海氷に覆われた「最後の砦(とりで)」になると思われていた。

ところが8月に撮影された衛星画像では、北極圏で最古級だった海氷の一部が、何もない海面に取って代わられた様子が観測史上初めて確認され、研究者らを驚かせている。

「ここは最後の砦とみなされていた場所だった。変化が訪れるのは最後になると思っていたが、それが来てしまった」。米国立雪氷データセンターの研究員ウォルト・マイアー氏はそう語る。

マイアー氏によると、グリーンランド北部沖の海氷は、北極圏のほかの地域に比べてはるかに厚い。これはシベリアから漂流してきた海氷が、グリーンランドの複雑な海岸線に阻まれて集積することによる。

ところが今年はそうした厚い海氷でさえも、異常気象の影響を免れることができなかった。

2月下旬から3月上旬にかけては夏のような熱波に見舞われ、南からの風によって海氷が崩壊する現象が発生。「今回のような現象は、今年初めにも観測された。まだ冬の時期で、普通ならば非常に寒いはずだったのに、極めて異常だった」とマイアー氏は振り返る。

氷の状態を観測しているグリーンランド・アイスサービスの専門家は、現在の状況は2月の現象に関連している可能性があるとしながらも、氷の解け方は今回の方がはるかに大規模で、これほど大きく解けた状態はこれまで見たことがないと話している。

かつてないほど海氷が後退したことを示すグリーンランド北部沖の衛星画像

ただし両氏とも今回の海氷の崩壊について、地理的には比較的小さな場所で起きた1回限りの現象にすぎないと強調する。

それでも北極圏を覆う海氷はほかにも変化が起きており、「これは北極圏の変化を示す新たな兆候だ。北極圏は、毎年夏になると解ける薄くて移動の多い氷に覆われつつある」とマイアー氏は言う。

一般的に、海氷が失われれば世界の気候に影響を及ぼす。

海氷が解けると、通常であれば反射されるはずの太陽光が青い海に吸収されて、海水と周辺の大気の一層の温暖化が進む。そこから悪循環に陥って、海氷がさらに解け、海水に吸収される熱はさらに増える。

「長期的には、氷がもっと解けて薄く、弱くなることは明らかだ。今回のような現象は今後も再び起きるだろう」「それでも夏の間に完全に氷がなくなるのはこの地域が恐らく最後になるだろう。だがここは私たちが思っていた以上に脆弱(ぜいじゃく)だった」。マイアー氏はそう話している。

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