ガザ人道財団の計画に「重大な懸念」の指摘、米政府はそのまま資金拠出
(CNN) パレスチナ自治区ガザ地区の支援活動を担う米国主導の団体「ガザ人道財団(GHF)」をめぐり、住民を保護して食料を届ける能力に対して米国際開発局(USAID)が「重大な懸念」を示していたことが分かった。しかし米国務省はそのわずか数日後、GHFに3000万ドル(約44億円)を拠出すると発表した。
CNNが入手した14ページの文書には、GHFが申請した資金拠出に関するさまざまな問題が列挙されていた。GHFは、11週間にわたってイスラエルに封鎖されていたガザ地区を支援する目的で設立された団体。しかし国連人権高等弁務官事務所によれば、GHFが運営する施設などの周辺で、これまでに数百人のパレスチナ人が死亡している。
USAIDの評価書ではGHFの計画全般について、例えばきれいな水が不足している地域に粉ミルク配布を提案するなど「基本的な詳細さえ」欠落していると指摘。「運用リスクと評判上のリスク、監督の欠如を考えると、GHFを前進させることには賛成できない」と言明している。
匿名でCNNの取材に応じた関係者は、GHFの申請について「実質的な内容を甚だしく欠いており、最悪だった」と酷評した。
トランプ政権はGHFに対する批判を一蹴している。支援物資を求める住民がGHFの拠点近くでイスラエル軍に殺害されているというマスコミ報道や目撃者や医師の証言、パレスチナ当局の発表に対し、イスラエルも反論していた。
米国務省報道官は8日、GHFへの資金拠出について「ガザの人々を食べさせるというトランプ大統領の約束」を果たす目的があると強調。批判については「官僚の縄張り争い」と位置付けた。
GHFの活動は、イスラエル軍と連携する米防衛関連企業の武力に依存しており、国際社会からの圧力が高まっていた。
240を超えるNGOは先週、GHFの活動を即刻終わらせるよう求めて共同声明を発表し、「ガザ地区のパレスチナ人は今、飢え死にするか、家族を養うために必死の思いで食料を手に入れようとして銃撃されるリスクを冒すかという、あり得ない選択を迫られている」と訴えた。

配給された支援物資を運ぶパレスチナの人々=6月6日/Abdel Kareem Hana/AP
申請承認の条件満たさず
GHFの申請に関するUSAIDの内部調査では、承認を受けるために通常必要とされる少なくとも9要素が欠落していることが分かった。
リスク管理計画では、支援物資を必要とするパレスチナ人に確実に届けるための具体的な説明が欠けていた。
USAIDはさらに、「害を与えない」という支援活動の倫理原則をどう遂行するかに関するGHFの説明がないと指摘。安全を確保しながら支援物資を確実に届けるための具体的な計画の提出を求めた。
ガザの配給所を4カ所から8カ所に増やす計画についても、具体的な場所が特定されていないなどの問題があった。
乳児用の粉ミルクについては、USAIDのガイドラインに従わない場合、「水の汚染や準備の不備が原因で乳児の疾患や死亡が増えるリスクがある」と述べ、「粉ミルクは殺菌水または煮沸水を使って調合する必要があり、現状では難しい」と指摘していた。
通常であれば、そうした懸念は拠出が認められる前に、GHFに伝えられるはずだった。
しかしそれが伝わらないまま6月26日に国務省が3000万ドルの拠出承認を発表。他国にも貢献を促した。
AP通信は先週、支援物資配給所の警備を担当していた米国企業が、食料を求めるパレスチナ人に対して実弾やスタン弾を使用したと報じた。