トランスジェンダー女性を拷問する動画に揺れるコロンビア、それでも殺人は続く

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フアン・カルロス・「ティト」・ブエルバスさん(中央)、ナワル・ヒメネスさん(右から3番目)と活動家仲間/Courtesy Juan Carlos Buelvas

フアン・カルロス・「ティト」・ブエルバスさん(中央)、ナワル・ヒメネスさん(右から3番目)と活動家仲間/Courtesy Juan Carlos Buelvas

未解決の殺人

ヒメネスさんが育った北部のモンテス・デ・マリア地域でも、武装集団によって植え付けられた恐怖は根深い。この地域は1990年代から2000年代にかけての紛争で荒廃し、2000年代初頭に武装解除した準軍事組織から結成された強力な犯罪組織、クラン・デル・ゴルフォの支配下に置かれるようになっていった。

冷徹な「社会浄化」という計算のもと、貧困層かつジェンダーマイノリティーで、性労働者として生計を立てていたヒメネスさんは、明らかな標的とされた。

ブエルバスさんはCNNに対し、ヒメネスさんが「弁護士になることを夢見ていた。その夢を諦めることなく、性労働から抜け出そうとしていた」と語った。

何日も激しい雨が降り続いていた5月22日、ヒメネスさんは収入を得るのに苦労していた。

午後10時ごろに街に立ったが、客は見つからなかった。普段なら午前1時半ごろに帰宅するが、友人によると、ミレレイさんは客を探し続け、最終的には夜明け前の暗い時間に町外れのロータリーに向かったという。

ヒメネスさんの遺体はその翌朝、近くの排水溝から発見された。

ミレレイさんが数週間前に殺害され、反LGBTQを掲げる暴力への怒りがわき上がっているにもかかわらず、コロンビアにおける多くのヘイトクライムと同様、ヒメネスさんの殺害をめぐって逮捕者は出ていない。

書面上では進歩的

ミレレイさんの死後まもなく、議員らは、検察官に対し反LGBTQ犯罪の捜査強化を促すなど、さまざまな条項を盛り込んだ法案にミレレイさんの名を付けた。ミレレイさんの死をめぐってはペトロ大統領も強く非難している。

少なくとも書面上では、これらの条項はコロンビアのLGBTQコミュニティーに対する既存の保護制度を大幅に強化することになる。同国では同性婚や養子縁組、そして公的文書上での性自認の変更権などはすでに保障されている。

しかし、コロンビア政府の言動と、エル・カルメン・デ・ボリバルやメデジンのスラム街といった場所で実際に起こっていることには著しい乖離(かいり)がある。国連の専門家は5月、この状況をコロンビアの「憲法上の大志と現実の間に横たわる根深い溝」と表現した。


(CNN)

中南米で初めて同性愛者の市長を選出した首都ボゴタ以外では、多くのコロンビア人が依然として従来とは異なるジェンダーロールを公然と非難する。

「ミレレイはある意味、自業自得だった」と、メデジン在住の保守派有権者(60)は家族との散歩中にCNNに語った。

人権団体によると、コロンビアの保守的なアンティオキア地方の中心地であるメデジンでは、何人もの人が同じ意見を口にした。この地方はLGBTQ住民にとって国内で最も危険な部類に入る。

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