【分析】直接協議は停戦合意なく終了、ウクライナはロシアへの「圧力」強化を要請

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ドルマバフチェ宮殿で顔を合わせるトルコとウクライナ、米国の代表団=16日、イスタンブール/Turkish Foreign Ministry

ドルマバフチェ宮殿で顔を合わせるトルコとウクライナ、米国の代表団=16日、イスタンブール/Turkish Foreign Ministry

イスタンブール(CNN) 3年ぶりとなるロシアとウクライナの直接協議は16日、イスタンブールの灰色の空のように漠然とした期待感とともに始まった。

協議が進むにつれ空は明るくなったが、和平への見通しは晴れなかった。

最終的に、今回の戦争で何度も繰り返されている大規模な捕虜交換と、将来の協議に向けた二つの議論のテーマ――ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談、および停戦の輪郭――が乏しい成果として残った。イスタンブールのドルマバフチェ宮殿に集まった報道陣は退散し、ボスポラス海峡に夕日が沈んだ。

停戦の問題は、埋めがたい立場の相違が最も顕著に表れている分野だ。

ロシアは先週末に今回の協議を提案することで、ウクライナとその支援国から30日間の無条件停戦に応じなければ新たな大規模制裁を科す、という最後通告を突きつけられる事態をうまく回避した。

一方、ウクライナ外務省のティーヒー報道官は16日午後、急きょ設けられた記者会見で、ウクライナ側は「きょう停戦合意する準備ができていた」と説明。合意を実現できなかったのは、ロシア側の低レベルの代表団に「おそらく限られた権限しかない」ためだと示唆した。

だが、障害はこれだけではない。トルコの当局者がCNNに明かしたところによると、ロシアの代表団は16日、無条件停戦は選択肢にないと明言し、ウクライナが戦闘停止を望むなら、ロシアが2022年に違法併合を試みた4州(ルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン)のうち、依然ロシアに占領されていない地域から撤退する必要があるとの考えを明らかにしたという。

これは新しい要求ではないが、ウクライナ政府にとっては受け入れ難い。米国のバンス副大統領も今月、ロシアが戦争終結の条件として「過大な要求をしている」と発言していた。

ウクライナとロシアの協議に際して車列が到着する様子=16日/Yasin Akgul/AFP/Getty Images
ウクライナとロシアの協議に際して車列が到着する様子=16日/Yasin Akgul/AFP/Getty Images

外交車列がイスタンブールの混雑した通りを抜ける中、米国のいら立ちは高まっているように見えた。米国の当局者は直接協議の直前に双方と会談。ルビオ米国務長官は、両国の今後の見通しについて厳しい評価を下してイスタンブールを後にした。

「我々が来たのは、ロシアとウクライナの間で直接交渉があるかもしれないと聞かされていたからだ。それが当初の計画だった」。ルビオ氏は記者団にそう語り、「これは実現しなかった。もし実現していたとしても、我々が期待したレベルではない」と断じた。

こうした状況から、ウクライナ側は情報発信の主導権を握ろうとすぐさま動いた。

代表団がイスタンブールに姿を現すや否や、ゼレンスキー大統領はアルバニアでの首脳会議の場から、トランプ米大統領や欧州の主要支援国を交えた電話会議を開催した。

この電話会議の後、ゼレンスキー氏はSNSに「ウクライナは真の平和をもたらすため、可能な限り迅速に対応する用意がある」と書き込んだ。一方で、行動する必要があるのはウクライナだけではないとの考えも明らかにし、「ロシアが無条件の全面停戦と殺害の終結を拒むなら、厳しい制裁を科さねばならない」と付け加えた。

イスタンブールにいるウクライナ当局者も同様の姿勢を見せた。

ウクライナのキスリツァ第1外務次官は午後に記者団の取材に応じ、「本日の交渉の暫定的な成果を今後確固たるものにしていかねばならない」「つまり、ロシア連邦への圧力を継続する必要があるということだ」と指摘した。

また、前向きな側面を強調しようとする動きも目立った。ウクライナ外務省のティーヒー報道官は合意に達した捕虜交換に触れ、「1000人対1000人の交換で合意できたなら、それだけでも価値があると考えている」「この点はウクライナ代表団の大きな成果だ」と述べた。

集まった報道陣=16日、イスタンブール/Berkman Ulutin/dia images/Getty Images
集まった報道陣=16日、イスタンブール/Berkman Ulutin/dia images/Getty Images

だが、ロシアがまたも停戦を拒み、協議への高官派遣の要請を無視し、米国が既に受け入れがたいとみなしている要求を持ち出すというここ1週間の展開にあって、米国による圧力が強まる兆しは依然見られない。

それどころか、トランプ大統領は16日、「準備が整い次第」プーチン氏と会談すると約束した。トランプ氏はかねて「プーチン氏と私が会談するまで、(ウクライナに関して)何も起こらないだろう」と主張している。

このため、ロシア交渉団を率いたウラジーミル・メジンスキー氏による公式評価はごく簡単なものにとどまった。「我々は結果に満足している。今後も接触を続ける用意がある」

本稿はCNNのクレア・セバスチャン記者による分析記事です。

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