命がけの出産や子育て、麻酔なしの帝王切開も 苦境深まるガザの女性たち
(CNN) ラジャア・ムスレさん(50)はパレスチナ自治区ガザ地区最大級の医療施設、シファ病院に避難している。同病院は、イスラエルの残虐な空爆から少しでも逃れられるかもしれないとの思いから、患者だけでなく家を失った人たちも詰めかけている。
米医療NGO「メッドグローバル」のガザ代表を務めるムスレさんは、イスラエルとガザ地区のイスラム組織ハマスの戦闘が始まったことを受け、ガザ北部沿岸部の自宅からシファ病院に避難した。
ムスレさんによると、シファ病院は大勢の人々であふれ返っている。その多くを占める女性や子どもは、心身の治療も受けられず、水もプライバシーもない状態で、病院の床や病院前の地面に寝泊まりしている。
「道路も病院も女性でいっぱいになっている。トイレはあまりにも混雑していて、私も1日に2回以上は行けない」とムスレさん。「もしもトイレを使えれば運がいい。必要とする人が40人から50人、60人もいる」
ガザ地区はイスラエルに完全封鎖され、飲料水や食料などの必需品に加えて妊娠中や産後の女性が必要とする用品や生理用品なども不足し、ムスレさんを含め数十万人の女性が絶望的な状況に追い込まれている。
パレスチナ保健省によると、イスラエルの空爆によって少なくとも9155人が死亡した。このうち73%を女性と子ども、高齢者が占める。
2人目の子どもを妊娠中のレハム・アフメド・アルサディさん(28)は、以前から女の子が欲しいと思っていた。医療支援団体を通じてCNNに届いたメッセージの中でアルサディさんは、「赤ちゃん用品や産後用品の準備から、出産のため病院にたどり着くこと、産後に無事退院することに至るまで」、全てに恐怖を感じると打ち明けた。
「戦争は、私の妊娠の喜びを打ち砕いた」とアルサディさんは言う。
国境なき医師団のターニャ・ハジハッサン医師は、水や食料、医薬品が不足して、ガザの病院は苦しみの連鎖状態にあると語った。
傷の手当てに使うガーゼや外科手術に必要な器具などの必需品は底を突きつつあり、負傷者は麻酔も痛み止めもないままの治療を強いられているという。
ハジハッサン医師によれば、妊婦が強いストレスを受けると流産や早産が増え、赤ちゃんが危険にさらされる。電力の枯渇は、人工呼吸器や透析装置などの医療機器を必要とする患者にとって「死の宣告」に等しい。
早産の赤ちゃんは保育器や呼吸器、輸液ポンプを必要としており、その全てが電力に依存する。「それがなければ早産児は生き延びられない」
人道支援組織の「ケア・インターナショナル」は10月30日、妊婦たちが麻酔なしの帝王切開を強いられていると伝えた。病院の空きがないために、産後はわずか3時間で退院させられているという。