イスラム教の祈り唱えて豚肉食べる動画を投稿、女性に禁錮2年の判決 インドネシア
(CNN) 世界最大のイスラム教国インドネシアの裁判所がこのほど、神への冒涜(ぼうとく)の罪に問われたイスラム教徒の女性に対し、禁錮2年の判決を言い渡した。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で共有した動画の中で、この女性はイスラム教の祈りの言葉を唱えた後、豚肉を試食していた。動画は観光地として知られるバリ島で撮影された。
スマトラ島の裁判所は19日、33歳の女性被告について、「信仰を持つ個人や特定の団体への憎悪を引き起こすことを目的とした情報を広めた」罪で有罪を宣告した。法廷文書から明らかになった。
裁判所は2年の禁錮刑に加え、米ドル換算で1万6245ドル(約240万円)の罰金も女性に科した。1人当たりの年間賃金が4300ドルのインドネシアでは、かなりの大金と言える。罰金を支払わない場合、女性の刑期は3カ月延長される可能性があると、裁判所は付け加えている。
公判の後、裁判所の外で記者団の質問に答えた女性は、判決に対する衝撃を表明。CNNの提携局CNNインドネシアが報じたコメントの中で、「自分が間違いを犯したことは分かっていたが、これほどの罰を受けるとは全く予想していなかった」と述べた。同局によると、女性は今後控訴する可能性がある。
2億3100万人の人口を抱えるインドネシアは、成人の少なくとも93%をイスラム教徒が占める。近年は宗教的保守派が台頭してきており、人権団体によると神への冒涜を禁じる法律は「武器として使用される機会が増えている」。宗教的少数者やイスラム教を侮辱したと見なされた人々が標的になっているという。
豚肉を食べることはイスラム教で禁じられており、その認識はインドネシア国内のイスラム教徒の大半が共有している。しかし中華系の人々やヒンドゥー教徒が多数派のバリ島の住民をはじめとする非イスラム教徒は、豚肉を日常的に食している。
イスラム教徒を自認する上記の女性はソーシャルメディア上に200万人以上のフォロワーを抱え、ライフスタイルや食べ物に関する動画をアップすることで知られる。イスラム教の聖なる言葉を唱えてから豚肉を食べる問題の動画は3月に共有したもので、その内容を巡って批判の声が噴出していた。
インドネシアで最高位のイスラム教聖職者団体は、動画を「冒涜的」とする決定を発表。一般社会での不満が高まって警察が捜査に乗り出し、女性は訴追されるに至った。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」のインドネシア担当調査員はCNNの取材に答え、「彼女は何も間違ったことはしていないが、こうした事態はインドネシア(の現状)について多くを物語っている。(中略)穏健なイスラム教国を自称しながら、実際には過激化したイスラム国家となりつつある」と懸念を示した。