ウクライナの対ロシア戦争を変えた三つの兵器

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
高い機動性と70~80キロの射程を有する精密ロケット砲システム「HIMARS」/Hannibal Hanschke/EPA/Shutterstock/FILE

高い機動性と70~80キロの射程を有する精密ロケット砲システム「HIMARS」/Hannibal Hanschke/EPA/Shutterstock/FILE

ロッキード・マーチンによると、ジャベリンは発射後にカーブを描いて上昇し、上空から目標に向かって降下できるため、ロシアの戦車の弱点である水平面を狙うのにも優れているという。

この点は、砲塔が吹き飛ばされたロシアの戦車を捉えた戦争初期の写真からも確認できる。多くの場合、砲塔を吹き飛ばしたのはジャベリンだった。

実際、ジャベリンのインパクトは非常に大きく、バイデン米大統領が開戦2カ月半後にアラバマ州にある製造工場を訪れ、作業員のウクライナ防衛への貢献をたたえた程だ。

ジャベリンにはもう一つ利点があった。特に開戦当初に重要になった点だが、政治的に受け入れられやすかったのだ。

カナダ・ブロック大学のマイケル・アームストロング准教授はメディア「カンバセーション」で、「低コストで自衛目的に使われるジャベリンは、他国にとって供与しやすい」と説明。「対照的に、軍用機のように比較的高価な攻撃兵器の供与については各国政府の意見がまとまっていない」と指摘した。

ハイマース(HIMARS)

米陸軍における正式名称は「M142高機動ロケット砲システム」。米陸軍の説明では「フルスペクトラム、実戦で証明済み、全天候型、24時間365日稼働可能、高い殺傷力と反応性を備える装輪型の精密攻撃システム」としている。

長い説明だが、より分かりやすく言うと、HIMARSとはロケット弾6発をほぼ同時発射できるポッドを備えた5トントラックのことだ。爆発性の弾頭を前線のはるか後方に向けて発射した後、素早く移動して反撃を避けることができる。

「ジャベリンが戦争初期を象徴する兵器だとすれば、HIMARSはそれ以降の局面を象徴する兵器だ」。米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン上級顧問は1月、そう指摘した。

HIMARSは「誘導多連装ロケットシステム(GMLRS)」と呼ばれる射程70~80キロの弾薬を発射する。GPS誘導システムにより極めて高い正確性を実現し、狙った目標の約10メートル以内に着弾する。

イスラエル国防軍指揮幕僚大学のヤギル・ヘンキン教授は米海兵隊大学出版局に寄せた文章で、HIMARSには二つの重要な効果があったとの見方を示した。

一連の攻撃で「ロシアは弾薬庫をさらに後方に移すことを強いられた。これにより、前線付近で使用可能な火力が減少し、兵站(たん)支援が一層困難になった」とヘンキン氏。

さらに、長距離ロケット弾で橋などを攻撃したことで、ロシアの補給に混乱が生じた点も指摘した。

HIMARSシステムはロッキード・マーチンが米国で製造し、特許を取得している。

「プーチン大統領」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]