ANALYSIS

トルコのNATO拡大阻止、裏目に出る可能性 プーチン氏がプロパガンダに利用も

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フィンランドとスウェーデンの北欧2カ国は昨年、NATOに加盟する意向を発表した/Yves Herman/Reuters

フィンランドとスウェーデンの北欧2カ国は昨年、NATOに加盟する意向を発表した/Yves Herman/Reuters

9日に予定されている3カ国協議ではおそらく何の進展もないだろうが、今のところ話題に上っているのは、仮にエルドアン氏が大統領選に勝利した場合、選挙後にどれほどの政治的資本を費やすことになるのかという点だ。

まずは楽観派の意見を見ていこう。

このグループに属するのはスウェーデンやフィンランド、そしてロシアと国境を接する国や旧ソ連圏だった一部の国だ。そうした国々は、NATO加盟国として多大な恩恵を受けているトルコが最終的には最大の国益を考慮して、反対の姿勢を取り下げるだろうと考えている。

その場合、トルコはテロリストに指定された人物の身柄の引き渡しではなく、もっと現実的な要求をしてくるのではないかと考えられる。たとえば制裁の解除や、戦闘機の購入に対する米国の許可だ。トルコは空軍の近代化に向けて戦闘機を非常に必要としている。

「単独での加盟申請」

要するに、妥協すればNATOにも大きく有利となるというのが楽観派の考えだ。NATO、スウェーデン、フィンランドはすでに立場を表明しているし、NATOにはどんな国も希望すれば加盟できるという「門戸開放政策」がある。スウェーデンとフィンランドは加盟国として申し分なく、両国が加盟できなければ、まさにトルコが恩恵を受けている同盟そのものが笑い者になる。NATO当局者がCNNに語った話では、エルドアン氏はサミットのタイミングを狙って譲歩して、「西側同盟国からの賞賛」をほしいままにするつもりではないかとの憶測も出ているという。

CNNが取材した関係者では悲観的な意見が圧倒的に多い。エルドアン氏が7月11日までに立場を変える可能性は限りなくゼロに近いと考える人々は、サミット後のこともすでに考慮している。

「フィンランドがスウェーデンとたもとを分かち、単独で加盟を目指す公算が高まっている」と、あるNATO外交筋はCNNに語った。

他の加盟国は今もなお、両国の加盟阻止もあり得るとして、NATOがそうしたシナリオに最善に対処するための方途を検討している。

複数のNATO当局者や外交筋はCNNの取材に対し、当面の危険について、トルコが加盟を阻止することで、西側諸国とNATOが分断しているとするロシア政府の言い分が勢いづくことだと語った。その際NATOは、たとえフィンランドとスウェーデンが加盟国でなくても、事実上NATOと足並みをそろえていることを明確にしなくてはならないだろう。加盟国ではないにしても、両国は可能な限り近しい友好国であり、もはや中立国ではないのだと。

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