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プーチン氏の次の標的か、モルドバが恐れる理由

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東欧モルドバ、次のプーチン氏の標的か

ロンドン(CNN) ウクライナ南西部と国境を接する小国モルドバで緊張が高まっている。現地ではロシアがクーデターの下地作りを進めていると非難する声が出ているが、クーデターとなればモルドバもロシアの戦争に巻き込まれかねない。

モルドバのサンドゥ大統領は、ロシアが民間人に扮した「破壊工作員」を使って政情不安な時期に混乱をかき立てていると非難し、ウクライナのゼレンスキー大統領の警告に同調した。

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ政府がモルドバの親ロシア派地域に対する攻撃を計画しているという根拠のない非難を繰り返している。親ロシア派地域はロシア政府の軍事的拠点で、プーチン氏がクリミア併合時と同じような口実をでっちあげているとの懸念が強まっている。

米国のバイデン大統領は先週、ロシアのウクライナ侵攻から1年の節目にポーランドの首都ワルシャワを訪問した際、サンドゥ氏と会談した。

バイデン氏がサンドゥ氏からのモルドバ訪問の要請を受け入れた様子はないものの、ホワイトハウスは、バイデン氏がモルドバの「主権と領土の一体性」を支持する立場を再確認したと発表した。

以下、モルドバについて知っておくべき点を見ていこう。

モルドバの国内情勢

ゼレンスキー氏は今月に入り、すでに政情が不安定なモルドバを弱体化させようとするロシアの計画について、ウクライナの情報機関が傍受したと警告した。

モルドバではガス価格の高騰やインフレ率の急上昇など危機的な状態が続いているが、先ごろ首相が退任したばかりだ。新首相は政府の親欧州連合(EU)路線を踏襲しているが、首都キシナウでは前首相の退任以来、少数派の親ロシア派政党が支援する抗議デモが続いている。

こうした緊張状態の中、サンドゥ氏は機に乗じようとするロシアを名指しで非難した。

サンドゥ氏によれば、ロシア政府は昨秋からすでに「軍事訓練を受け、民間人になりすました破壊工作員が関与する暴力行為や政府機関への襲撃、誘拐などの一連の行動」を計画していたという。

サンドゥ氏は、「いわゆる反対勢力」になりすました人物が「暴力行為」による強制的な政権交代を図っていたとも主張した。CNNではこうした主張を独自に確認できていない。

「ロシアからの脅威や、我が国にまで戦争を拡大しようとする思惑が高まっているのは明らかだ」。モルドバの元外務次官で、現在はキシナウを拠点とするシンクタンク「欧州政策改革研究所(IPRE)」の所長を務めるイウリアン・グロザ氏はこう語る。

「モルドバはウクライナに次いで、戦争の影響をもっとも受けている。我が国はほんの小国で、経済的は発展途上だ。そのために大きな圧力が生じている」(グロザ氏)

ロシアの策略

ロシア政府は潔白を主張しているものの、ロシアの対モルドバの動きは、2014年のクリミア併合や昨年ウクライナに全面侵攻した際と驚くほど類似している。

ロイター通信によると、プーチン氏は21日、モルドバの独立を一部承認する12年の政令を撤回した。

23日には、モルドバの親ロシア派の分離主義勢力が支配する「トランスニストリア」について、ウクライナが「近い将来」「武力で挑発しようと準備している」とロシア国防省が非難しているとロシア国営タス通信が報じた。

国防省の主張を裏付ける証拠や詳細は明らかにされず、モルドバもこれを一蹴した。

だが、西側首脳はこの主張に警戒を強めている。ほぼ1年前にもプーチン氏は同じように、ドンバス地方でロシア人が狙われているという根拠のない主張を行い、ウクライナ侵攻を自衛のためと主張したからだ。ウクライナ東部のドンバス地方では14年以来、ロシアが分離派の武装勢力を支援している。

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