コロナ拡大認めた北朝鮮、より大きな問題を隠蔽?

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北朝鮮での感染拡大を報じるニュースをテレビで見る韓国・ソウルの人々/Lee Jin-man/AP

北朝鮮での感染拡大を報じるニュースをテレビで見る韓国・ソウルの人々/Lee Jin-man/AP

新たなコロナ変異株か、それともコレラか?

当初最も心配されたのは、ワクチン未接種で栄養状態が悪く、医療制度も貧弱な北朝鮮で感染が広まり、壊滅的な被害が起きることだった。

国連のキンタナ北朝鮮人権状況特別報告者は、現時点で感染規模を把握するのは不可能だとしつつも、高齢者や栄養不良の子どもの間で死者が出ているとの未確認の報告があると明らかにした。

約2500万人の北朝鮮国民の間で感染拡大が止まらなければ、より毒性の強い新型変異株が出現する恐れもある。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が始まるまで北朝鮮を年2回訪問していた米国の神経外科医、キー・B・パク博士は、北朝鮮は情報共有に積極的ではないように見えると指摘。「これは北朝鮮にとっても他国にとっても良くない」と話す。

「ウイルスの性質に何らかの新しい変化、たとえば変異が起きた場合、必ず正しく情報を共有しなければならない」(パク氏)

「増殖率が高いと新たな変異株が生まれる可能性がある。それを察知する唯一の手だては互いに情報共有することだ」

北朝鮮は6月、首都平壌の南120キロに位置する黄海南道で正体不明の腸の病気が流行していると発表した。

少なくとも、この発表は疫病の流行に対する北朝鮮の脆弱(ぜいじゃく)さと医薬品不足を浮き彫りにした。

パク氏は、北朝鮮はおそらく腸チフスかコレラの流行への対応を迫られているとの見方を示す。

「北朝鮮のような場所では、感染症の発生率が高くなることが予想される。実際、5歳未満の子どもの死因として最も多いのは下痢症だ」(パク氏)

一筋の希望?

パク氏にとって一筋の希望は、北朝鮮がワクチン接種を迅速に進める能力を持っていることだ。2006年の麻疹流行の際には全国規模の接種プログラムが行われた。

「最初のサイクルでは1日平均100万回、そして07年の第2サイクルでは1日平均300万回を超える接種が行われた」(パク氏)

「こうした数字に基に判断すると、全ての条件がそろった場合、北朝鮮は8日間で全国民に少なくとも1回のワクチンを投与することができる」

ただ、「隠者の国」とも呼ばれる北朝鮮は外部の支援の受け入れに消極的で、けっして楽観はできない。

「彼らは我々が当然と思うような物を病院に備えるのにも苦労していた」。パク氏は北朝鮮で働いていた頃をそう振り返った。外科医はメスなどが鈍って使えなくなるまで再利用しているという。

国連や米国、韓国などは北朝鮮に支援を申し出ているが、いずれも無視されている。

ただ、中国からの支援は北朝鮮に届いている。税関のデータによると、1月から4月にかけ、北朝鮮はマスク1000万枚以上、人工呼吸器1000台、種類は不明だがワクチン2000キロ以上を輸入した。

世界的なワクチン普及組織「Gavi」は先月、北朝鮮が中国から新型コロナワクチンを受け入れ、投与を開始したものと理解していると述べた。

Gaviの報道官はCNNに対し、北朝鮮は「ワクチン分配の国際的な取り組み『COVAX(コバックス)』に正式に支援を申請していないものの、もし申請した場合、我々には支援の用意がある」と表明した。

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