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上海で募る飢えと怒り、終わり見えぬロックダウンの悪夢

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ロックダウン下の上海で、新型コロナ検査を受けに集まる住民たち/Qilai Shen/Bloomberg/Getty Images

ロックダウン下の上海で、新型コロナ検査を受けに集まる住民たち/Qilai Shen/Bloomberg/Getty Images

(CNN) 先週末、73歳になる父が食料不足について懸念を漏らした。この時筆者は不意に、上海市全域にわたる新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)による惨状を痛感した。

「近いうちに政府の配給がなければ、数日のうちに底をつくだろう」と、父は14日にメッセージを送ってきた。

きっとこちらが心配すると思ったのだろう、それから父はこう続けた。「まだ米とクラッカーがいくらかある――コーヒーもたっぷりと」

中国最大の都市にして金融の中心地である上海の痛ましい現実を、はっと思い知らされた――1949年に共産主義革命家の毛沢東が中華人民共和国を建国し、最初の数十年で数百万人が命を落とした大飢饉(ききん)と文化大革命を乗り越えた世代の口から。

上海で生まれ育った筆者の両親は、毛沢東政権の暗黒時代のさなかも「地方の人たちとは違って飢餓の心配がなかっただけ自分たちは恵まれていた」と筆者に何度も言って聞かせた。

そして今、次第に厳格化するロックダウンの中、以前では考えも及ばなかった思いが上海市内外の住民の頭によぎっている。2022年の上海でひもじい思いをする人々がいるのだ。

政府も認めているように、食料不足は主に計画不足や調整不足による人的災害だ。

表向きの約束とは裏腹に、市の大部分では政府の配給もまばらだった。父のような退職者が多く住む上海市北東部の住宅エリアも例外ではない。今の時代、上海では実質インターネットが唯一の買い物手段になっているが、高齢者の多くはネットで大量注文して食料を補給することができなかった。高齢者は必要とする食料の量が比較的少なく、テクノロジーにも疎(うと)かったためだ。

筆者も助けに乗り出したが、まさかネットでの日用品の買い物がこれほど精神をやられるものとは思いもしなかった。

ホールセールクラブ(量販倉庫型スーパー)の会員証を携えていざ臨んだところ――会員なら一般ユーザーよりも楽に買い物できるだろうとたかをくくっていたのだ――ネットショップの品ぞろえは十分だったが、毎日夜9時に設定されている目当ての配送枠を獲得するのは不可能なことがすぐに分かった。

店舗のアプリは毎晩クラッシュした――数時間後に復旧しても、「本日の配送枠は終了しました」のメッセージが表示されるばかりだった。

苛立ち(いらだち)と不安が募る中、父の食料とともに筆者の望みも消えていった。無駄な努力をして2日目、翌日配送の食料品パックの提供を続けている「高級」オンラインショップを友人から教えてもらった。友人の言った通りであることがわかり、喜んだ筆者はすぐに父の食料を注文した。

だが家族のグループチャットで朗報を告げると、おじとおばたちは――程度の差こそあれ、彼らもみな食料不足に直面していた――5キロの野菜と卵60個に398元(約8000円強)も払ったことに驚きをあらわにした。

「ぼったくりだ!」とおじの1人は叫んだ。おばの1人は、ふだん市場で同じ量の食料を買う時の4倍以上の値段だと力説した。

「でもこれは高級卵だから」と、父はやり過ごした。

父の冷蔵庫の補充が間に合って筆者もほっとしたが、親戚の意見を耳にすると「生存者の罪悪感」にかられた。法外な値段の食料品に手が届かない無数の住民はどうしているのだろう?

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