ANALYSIS

キューバ、資本主義への扉をさらに開く 長年の停滞越え

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農場で作業するキューバ人=2021年1月10日、キューバ・ピナルデルリオ/Yamil Lage/AFP/Getty Images

農場で作業するキューバ人=2021年1月10日、キューバ・ピナルデルリオ/Yamil Lage/AFP/Getty Images

ハバナ(CNN) キューバが今月に入り、長年待望され、そして恐らく不可逆的な一歩を踏み出した。民間部門の大幅な拡大だ。

キューバの共産党政権は6日、国民が間もなく大半の仕事で職を求めたり、起業をしたりできるようになると発表した。

これまで民間部門での就業は公的に認められた127の部門に限られていた。こうした仕事には理髪店や修理業、ヤシの木の伐採、ドレスアップして観光客と写真に納まる「ダンディー」と呼ばれる仕事などがあった。

だが多くのキューバ人は、政府のリストにインターネット利用の拡大に伴う仕事の機会がなく、またイノベーションや発明の可能性が制限されている状況に不満を募らせていた。

それが今、2000以上の仕事の分野での就業が認められるようになる。

「閣議で承認された自営業に関する新たな措置は、人々が実行できる活動を極めて大きく広げるものだ。こうした種類の仕事を開発する新しく重要な一歩だ」。進みの遅かったキューバ経済近代化の取り組みを監督し、「改革の皇帝」と呼ばれる当局者のマリノ・ムリロ・ジョルジュ氏はそう語る。

キューバではかつて、旧ソ連の崩壊で経済がほぼ壊滅的な状態となるまで、自営業や資本主義はほとんど認められていなかった。旧ソ連は同国の最大の貿易相手だった。

食料を買うために列を作る人々=キューバ首都ハバナ/Yamil Lage/AFP/Getty Images
食料を買うために列を作る人々=キューバ首都ハバナ/Yamil Lage/AFP/Getty Images

その後少しずつ、行ったり来たりを繰り返しながら、国民が低賃金の国の仕事をやめて自営業を始めることが認められた。政府統計では、現在60万人あまりのキューバ人が民間部門で働く。ただ同国の盛況な闇市場を考えると、その人数ははるかに多い可能性が高い。

それでも政府当局者は起業家を必要悪と捉えたり、米国の敵対勢力にキューバ革命打倒を許しかねない「トロイの木馬」の可能性があるものと見たりすることが多かった。

キューバ当局の公式な方針では、自由市場の改革は「急がず、しかし歩みを止めず」進めることになっているものの、実際の開放は停滞していた。政府には起業家をさらに支援することがよいのかどうか疑問視する見方があったようだ。

だが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生し、またラウル・カストロ氏(89)が4月に共産党トップから退任を予定する中、政府は今年、ついに2つの大きな改革に着手した。入り組んだ二重通貨制度の統一化、そして今回発表した就業制限の撤廃だ。

政府は124の活動では民間部門の参入を制限する予定だ。まだその活動の発表はないが、医療や電気通信、マスメディアといった分野で国の独占が続きそうだ。

新たな措置は徐々に国の経済の様相を変えていくだろうと、キューバ人経済学者のリカルド・トーレス氏は語る。

トーレス氏はCNNに対し、「どの124の活動の禁止が続くのかはまだわからないが、専門的な職業に及ぶ可能性があると考えるのがよさそうだ。教育に巨額の投資をしてきた国で昔からある需要だ」と語った。

こうした変化はキューバが米国との関係改善を探る中での動きともなる。トランプ政権の4年間では新たな一連の経済制裁を科されてきた。

民主党のパトリック・リーヒ上院議員(バーモント州選出)はツイッターに、「これは大幅に遅れていたものだが、歓迎すべきニュースだ。米国は禁輸措置がこれまでも、これからも、キューバの民間企業を制裁するためのものではないということを確認すべきだ」と投稿した。

「半世紀以上を経て、冷戦時代の禁輸措置を撤廃する時期を迎えているのではないか。その目的は何も達成できず、苦しむキューバ国民の生活をさらに厳しくするだけだった」(リーヒ氏)

リーヒ氏はキューバとの関係改善を長年支持してきた人物。今月初めには60年近くに及ぶ対キューバ禁輸措置を撤廃する法案を共同提案した。

キューバ―で長年苦しんできた独創性に富む起業家たちは、何が起きるのかを注視していくだろう。

本稿はCNNのパトリック・オップマン記者による分析記事です。

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